吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

生物から見た世界 --ユクスキュル、クリサート

ヤーコブ・フォン・ユクスキュル(著)、ゲオルク・クリサート(絵)

 

「BOOK」データベースより引用
甲虫の羽音とチョウの舞う、花咲く野原へ出かけよう。生物たちが独自の知覚と行動でつくりだす
“環世界”の多様さ。
この本は動物の感覚から知覚へ、行動への作用を探り、生き物の世界像を知る旅にいざなう。
行動は刺激に対する物理反応ではなく、環世界あってのものだと唱えた最初の人ユクスキュルの、
今なお新鮮な科学の古典。



「野性の呼び声」「白い牙」を読んだ時、オオカミ目線で見る世界がすごく気になりました。
人とオオカミは同じものを見ても見方が全く違うんだろうなという当たり前のことがやけに新鮮に思えたからです。
もちろんこの場合の見方はあくまで抽象的なものです。

 

白い牙を読んでいる頃、丁度この書名を見つけてパラパラめくるなり「これだ!」と思い購入しました。
人の目で見た部屋の絵、犬の目から見た部屋の絵、ハエの目から見た部屋の絵が並べてあったのが決め手でした。

 

1933年に描かれた作品なので生物学の専門家ではない私ですら古さを感じるのですが、
目からウロコが落ちました。
ダニやハエ、ウニ、ミミズ、ヒキガエルなどから見た世界、彼らが主体的に何を見てどう行動するか、
環世界とは何か、思い込んでいたことに気付かされたり、
自分の感覚で世界を判断してはいけないなあなと、なんだか勉強になりました。
あ、でも環世界って何ですか?って聞かれると説明が難しいのでしないでください(笑)

 

専門用語が多いのでわかりにくい部分も勿論あるのですが、絵を使った比較はわかり易かった。
例えば「きこり」「少女」「きつね」「ふくろう」「アリ」「カミキリムシ」「ヒメバチ」など
から見たカシワはどんな存在かってことが絵で比較しているんですが、

 

・「きこり」はどのカシワが切る対象になるか測定する対象にしか見ていない。
・「少女」は森の中にいる地の精や小人の存在が頭の中にあるのでカシワのこぶが
 悪魔の顔に見えてしまい恐れる対象になる。
・「きつね」は根に巣穴を作り自分たちを守るものであってそれ以外には興味を持たない。
・「ふくろう」は枝などを防壁としてカシワを見ているだけで根などいっさい見ていない。
・「アリ」にとっては山アリ谷ありの猟場とした樹皮しか見ず、それ以外のものは全く見えていない。

 

「多種多様な環の全てにおいてカシワは客体として変化に富んだ役割を担っている。」
ということがよくわかる。
伝わらないとしたら私の書き方が悪いだけです、スミマセン。



読みながら思ったのですが、最近読んだばかりの「モダンタイムス」でも
見方を変えると全く違うものが見えてくるんだ、みたいなメッセージがあったし
「ボディ・アンド・ソウル」だっていつもと違う観点で本を読むことを迫られてるし
なんだか本書で示唆しているものを、読書に置き換えていちいち納得してしまいました。
久しぶりに味わう、全く関係ないと思われる本の不思議な連鎖を感じました。
ちょっとこじつけもありますが(汗)

 

ただ面白い本なんですけど、最近の読書にしては淡々とした文章のため、
睡眠導入にも持ってこいの作品でもありました(笑)