株価暴落 --池井戸潤

巨大スーパー・一風堂を襲った連続爆破事件。企業テロを示唆する犯行声明に株価は暴落、
一風堂の巨額支援要請をめぐって、白水銀行審査部の板東は企画部の二戸と対立する。
一方、警視庁の野猿刑事にかかったタレコミ電話で犯人と目された男の父は、
一風堂の強引な出店で自殺に追いこまれていた。傑作金融エンタテイメント。
（「BOOK」データベースより引用）

カリスマ経営者風間が牽引する大手スーパーは古い体質が災いして経営が思わしくない。
白水銀行は主力銀行として巨額を融資している上に先が見えないままさらに融資を迫られる。
そんな折にスーパーで爆破事件が起きることでスーパーの信用とともに株価が落ち始める。
延命措置だけの融資をするか、自浄能力を引き出して経営の再構築を目指すかで銀行内部の
対立が深まる。
旧態依然のスーパーと銀行の駆け引き、銀行内の駆け引き、スーパー内の駆け引き、
爆破犯人の目的と正体は？など、めまぐるしく展開するストーリーは最後まで飽きさせない。

いやあ、エンタメ作品ですね。これ。色んな人物やいろんな出来事が次々と繋がっていたりして
かなり都合のいい展開ではあるのですが、そんな事は気にしてはいけません！
素直に楽しんだ者勝ちでしょう。

銀行的正義感（使命感）を持ち、少数派ながら奮闘する主人公とそれを邪魔に思うエリートたちという
図式や経営責任を感じないワンマン社長が引っ張る企業倫理の問題などは池井戸作品の定番でわかりやすい。
素直に主人公の気持ちにシンクロすればいいし、素直に刑事の見ているものを追っていれば良い。
嫌なキャラクターが何人か出てくるが、そのまま嫌な奴なので読んでいて楽だった（笑）

ただ、犯人として追われる男はキャラクターに統一感が感じられなかったし、
行動にも疑問が残るため感情移入はできませんでした。彼女の行動もなんか変。
が、繰り返しますがとにかくそのあたりには目を瞑って、難しく深く考えずに流れるままに
読んでいけば十分楽しめる作品なのでした。