吉祥読本

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プリンセス・トヨトミ ::万城目学

映画が上映される前にとにかく読もうと決めていましたが、何とか間に合いました。

 

会計監査院の松平、鳥居、旭の三人が大阪出張し、いくつかの組織を調査する。
その中の一つに謎の組織「財団法人OJO」があり、過去の情報がやけに少なく
何をしているのかもわからない。
しかし、三人の調査員が調査を始める事で俄かに大阪中が蠢き出す。
一方、大阪の男女二人の高校生はその動きに徐々に巻き込まれるが、
彼らこそがこの騒動の中心的人物たちでもあった。無自覚なままに。。。。

 

大阪が全停止、と言われても何だろう?って感じでしたが実際は停止していない。
通常業務が機能していないうえに大阪で起きている事が情報封鎖されるという設定。
ただしスケールが大きい割りにやけにスモールワールドな印象を受けたエンタメ作品でした。

 

大阪らしい掛け合いが面白いけれど、妙に狙いすぎてスベッていることもしばしば。(感覚の違い?)
徳川家対豊臣家を装っていて、登場人物の多くが戦国武将の名前とシンクロしている。
武将だけではなく利休らしき名前もあるから、豊臣家に縁がある人物がまだいるかもしれない。
その点、遊び心は満載だ。

 

ただ、名前のおかげで誰がプリンセスかが速攻でわかってしまうという弱点もある。
ストレートすぎて、実は真田家の長男が?と勘繰ってしまったくらいだ(笑)
まあ、それはマキメさんも織り込み済みなのでしょう。
公然の秘密だけど黙っておこうね、と大阪の男の立場を読者にも体験させているのかもしれない。

 

前半は冗長で、ようやく盛り上がってきたぞ!と思ったわりに「あれ?こんなもんなの?」みたいな
物足りなさは期待が大きすぎたかもしれない。何十年に一度あるお祭りみたいな印象。
でも実際にあるのなら確かにワクワクしそう。
大事にひょうたんをしまっておきそうな自分が想像できる(笑)
終章にいくつかの謎が明かされるが、マキメさんの描く色んな人たちの優しさが存分に出ていた。
過去の作品に比べるとちょっと残念ですが、終わりよければ全て良し、とも言いますし。



ところで映画では鳥居、旭が逆になっているようですね。
あの設定を変えてしまっていいのでしょうか。
旭が警察に鳥居を引き取りに行く場面や、終章の良さは旭が女だからこそだと思うし、
そもそも騒動の発端だって。。。。
原作と映画は全く別物になるということなんでしょうね。