吉祥読本

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イルカと、海へ還る日 ::ジャック・マイヨール

ジャック・マイヨールといえば映画「グラン・ブルー(邦題はグレート・ブルー)」を思い出す人も多いでしょう。
個人的にはジャン・レノが演じたライバル、エンゾの印象が強いのですが。。。

 

素潜りで世界記録を何度も打ち立てた人で、世界中を旅しながら色々な職業で生計を立てていたようだ。
まず、将来に大きな影響を与えたのが子供の頃、佐賀県唐津でのイルカとの出会いだった。
その後、マイアミ水族館でイルカの世話係をはじめ、イルカをお手本に水中で長時間過ごす方法を会得する。イルカとの恋人のような関係は羨ましいほど伝わってきます。
そしていよいよフリーダイビング(閉息潜水)に挑戦するようになり、世界記録を次々更新していく。

 

ヨガの呼吸法をはじめとしてちょっと専門的すぎる部分もあるが、
(附記として閉息潜水の訓練マニュアルなるものまで掲載されています。)
やっていること自体は人間離れしていて大変興味深い。

 

途中、マイヨールは競技よりも研究へと興味が変転していく。
潜水中の人間の状態を調べるための実験に参加し、装置を装着したまま潜るなど素人からすればかなり無謀な印象である。
それもいずれはホモ・デルフィナス(イルカ人間)を目指すためだ。

 

かなり変わった人物でもあったようだが、どんな世界でも天才の行動は凡人には理解しにくい。
宗教的な匂いすら漂うが、命懸けのチャレンジには相応の精神力が必要な世界なのだろう。
しかし、そこまで精神を研ぎ澄ますことができ、海を愛した彼がなぜ死を選んだのか、不思議である。
この点に関してはマイヨールの兄が書いた作品を読んだので改めて。