吉祥読本

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写楽とお喜瀬

著者:吉川永青
出版社:NHK出版

 

能役者・斉藤十郎兵衛が写楽として短い期間に残した絵を世に放つ経緯と苦悩を描く人情噺。

芝居を観たいがために役者絵を描き、士分のため名前を秘す必要がある十郎兵衛。
陰間であるお喜瀬との出会いと別れや許嫁の不幸な死など、苦しみを絵にぶつけ反映しながら苦悩する姿が痛々しい。

命の恩人である井上左馬之助夫妻の深い優しさによって強くなったお喜瀬との再会は静かな余韻をもって写楽を消し去り、新たな幕を開けるのでしょう。

 

蔦屋重三郎の山師ぶりと約束を守る俠気ぶりを含め、吉川作品らしい爽やかな登場人物たちが気持ちいい。

 

 

2019/10/20読了