吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

空白の天気図 --柳田邦男

ノンフィクションを読むようになったのは、柳田邦男がきっかけだった。

小学生のとき、パイロットになりたいと漠然と考えていたせいか、
中学生になっても航空機の雑誌などを定期的に読んでいた。
その雑誌中に、世界で起きていた航空事故の概要が載っているコーナーがあった。
日本では報道されない事故が、毎月のように世界で起きているのを知った。

だから、「マッハの恐怖」を書いた柳田邦男と出会うのは必然だったんだと、
勝手に思っている。

それから柳田邦男の著作物をたて続けに読みはじめ、どれも素晴らしかったのだが、
一番印象に残っているのが「空白の天気図」だった。

原爆が投下され、直後の9月に大型の「枕崎台風」が壊滅状態の広島を襲うという中で、
広島の気象測候所で、またその周辺で何が起きていたのかを描いている。

最も印象的で感動的なことは、そんな状況のなかであっても職員たちは、
プロとして自分たちの仕事を黙々とこなしていることである。
本当に頭がさがります。
この真摯な姿は、今の日本で徐々に欠けているとても大事なものだと思う。
今の政治家や官僚、特に社保庁!!
これを読んで、悔い改めてほしい。

それから是非、これから就職しようとしている人たちにも読んでほしい。
どんな分野であれ、プロフェッショナルとしての職業人とは?
という答えのひとつが提示されていると思う。
えらそうだけど、ホントです。

飛行機事故、原子力事故、医療事故等々、柳田邦男がずーーーっと前に
問題提起していたことは、残念ながら何一つ解決できていない。

柳田邦男と本作は、洞察力、取材力、構成力、どれをとってもノンフィクションの
最高峰だと、今も思っている。