「子供のころはよく、本を読みながらその場からいなくなることができたんですが、
星さんの本はそんな一冊だった。」
新井素子の言葉に同感。
本作は「人民は弱し 官吏は強し」で書かれた星新一の受難を、膨大な資料を基に
別の角度から照らし出していた。
SF界の黎明期を分かりやすく教えてくれた。
SF界を盛り上げようとした星新一の努力や仲間たちとの交友関係などは知らないことが多く、
驚かされた。
それにしても勝手なイメージで星新一を結局ボンボンだったんだよな、と思っていたが、
ここまで悩んでいたとは知らなかったなあ。
ノーテンキに読んでいたことを謝りたい気分です。
作家としてのプライド。
「星新一の歴史=日本のSFの歴史」のはずなのに低かった評価。
飄々とした紳士のイメージの裏にある嫉妬。
永遠に読み続けられるようにと、時代とのリンクをできるだけ減らすために続けていた改定作業と
埋められない苛立ち。
苦悩を知ると共に、星新一の考え方、仕事の取り組み方も知ることができたが、
自分にとって星新一に受けた影響が実はとても大きかったことにも気付いた。
細かいことなので、説明ができないのが悔しいのですが、
子供の頃に受ける影響ってバカにできないよな~っとか、
見えないはずの書き手の姿勢は、案外伝わるものなんだなあ、などしみじみ思う。
違う業界だって同じだよなって、反省も少々。
人間、星新一を理解するうえでの貴重な資料として読むことができました。
ちょっとページ数が多いけど。
こんな情報を仕入れたうえで、夢中で読んだ作品たちが今どんな印象になるのか・・・
改めて興味が沸いてきたけどショートショートとはいえ、作品が多すぎる。
けど、ゆっくりトライしたい。