「花神」をきっかけに好きになった高杉晋作を決定的に好きになったのは本作のおかげです。
4巻セットですがあっという間に読み終わった記憶があります。
幕末にはキラ星のごとく魅力的な人物が現れますが、
私にとってこの人以上のヒーローはいません。
吉田松陰と高杉晋作が軸となる本作ではそれぞれの人物像と果たした役割が
テンポ良く描かれています。
松蔭も魅力的な人ですが、とにかく晋作の先見性、行動力、いい意味での身替りの早さ、
破天荒な性格、全てが魅力的です。
一途な情熱、柔軟な考え方、思い切りの良さ全てを併せ持つスーパーヒーローは
激動の時代のためだけに生まれてきたように思えます。
放蕩を重ねても、投げ出しても、結局次から次へと時代は彼を必要とします。
国のシステムが変わる時には、きっとこんなタイプの人が必要なのでしょう。
青臭さの伴う正義感や使命感に命をかけることの出来る人たちの放つまばゆさ。
晋作は他の多くの立役者と共に明治維新の結果を見ることなく倒れ、役割を終えましたが
長生きしても彼の居場所はきっと無かったような気がします。
それは吉田松陰も同様ではないでしょうか。
発想する物、切り拓く者、基礎を固める者、体制を作る者、発展させる者、安定させる者
それぞれ役割があり、バトンは渡されていく。
本書に出てくる人たちは対立するもの同士であれ、バトンを渡されたとなると
何が何でも自分の役割を果たそうとする胆力のある人ばかりだ。
というかバトンを奪い合っているようにも見え、エネルギッシュで頼もしい。
「おもしろきこともなき世をおもしろく」
有名な晋作の辞世の句で、私もとても大好きな言葉ですが、
同時代に逞しく生きた人たちに送られた、賛辞のメッセージでもあるのではないかと
勝手に思っています。
この言葉を知ってからというもの、やりたくないことが目の前に現れたときには
心の中でよくつぶやいています。
どんなことでもどうせやるなら、面白くする工夫を自分で考えろって。
他人に依存していてはいつまで経っても問題は解決しないですもんね。
司馬遼太郎作品の中では最も好きな作品です。
まだの方は、お試しあれ。