吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

ナイフ --重松清

初めて読んだ重松清の作品です。
買う際にざっと確認したのですが、こんなに重いストーリーだったとは・・・というのが印象でした。
5本の短編なのですが、ほとんどがいじめに関する内容。
今のいじめの雰囲気がやけに明確に描かれている。

子供にも大人にも、どこの世界でも、そして誰にでも起こりえるいじめが表現されているため、
あまり良い気分で読み進めることができない。
ただ、子供には子供なりの、親には親なりの苦しみがとてもリアルに
描かれていたのではないでしょうか。
ゲームという言葉では済まされない、いつか自分に廻ってくるかもしれない不安と
終わらないゲーム・・・
読んでいると苦しい。痛い。


だからといって、それぞれの話しが暗いまま終わるわけではない。

「ワニとハブとひょうたん池で」で描かれる女の子は親に相談しても何の解決もしないことを
感じているために一人で力強く戦う。その姿勢に感じ入るものがあった。
少しだけ成長したなと思わせる安堵感みたいなものを感じた。

「エビスくん」は、こんな子供がいるのだろうかと思うくらい憎らしい子供であるエビスくんと
彼にいじめられる子の話しなのだが、最後は思わずホロリとさせられた。
本作のなかではこれが特にいいかな。

この2本は特に印象に残ったのですが、好きな本のリストに入れにくい題材、内容なのも確かです。
だけど、この作品は多くの人に読んでほしいなと思います。
大人たちも子供たちも、目をそむけず、わずかであっても前向きに、希望を持てるように・・・