吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

子供たちは森に消えた --ロバート・カレン

「BOOK」データベースより引用
1982年、体制の崩壊を目前にしたソヴィエト連邦ロシア南部の森で、
ナイフの傷跡も無残な少女の死体が発見された。
それを皮切りに次次と森で子供たちが惨殺される事件が発生し、担当の捜査官ブラコフは、
精神科医の協力を得つつ連続殺人犯を追う。
そして1990年、ついに逮捕された男は、恐るべき事件の全貌を語り始めた…8年間に50人以上の
少年少女の命を奪った異常殺人者の素顔に迫る、戦慄の犯罪心理ノンフィクション。



チャイルド44が書かれるきっかけとなった実際に起きた事件をレポートしたノンフィクション作品です。
チャイルド44では30年ほど時間をずらし、スターリン体制下で起きたことになっていますが、
実際に起きた事件は1982年と、より現代に近い時期ということに改めて戦慄します。

 

ソ連崩壊前で政治的にはとても不安定だったことがこの猟奇的連続殺人事件の背景にあることは否めない。
そしてその政治システムの不安定さが連続殺人を可能にし、またそれが解決に結びつくべく
捜査の継続に繋がっていることに皮肉を感じる。

 

実はチャイルド44から入ったことによって犯人の名前を最初から知っていた事は、
この本を読む際にはちょっとマイナスになった。
なぜならこの本の作りが「捜査」する過程や捜査員に関する記述で約2/3近くが費やされているからだ。
犯人を知らなければミステリー作品のような読み方が可能だったのでしょうが、
知っていると逮捕に至るまでが長くてまどろっこしい。
犯人の心理に興味を持っていたために読んだのに本の半分過ぎで犯人逮捕とは。。。

 

と、言う事で途中で読み方が間違っていたと反省しました。
この作品はソ連という混沌とした国でどうしてこのような事が起きたのか、
そしてその環境の中で捜査官がいかにして犯人にたどりつく事ができたのか、
これが本書の目的だったのでしょう。
確かに犯人の心理は社会背景が原因になっていたことは間違いなく、
当時のロシアならではだったんだということは理解できました。
尋問された容疑者が無実なのに追い込まれて次々と自白してしまうなどの状況は
まさにシステムの問題を浮き彫りにしていました。

 

でも、今の日本はこれを昔の海外の話、として受け止めていてはいけないのでは?と思いました。
むしろ今の日本人の心理にはこの状況に近いものが巣くっているいるような気がしてなりません。



ところで、チャイルド44はこの事件をかなりトレースしていることがわかりました。
犯人が味わった小さい頃の逸話、精神疾患のある人を犯人としてでっち上げたこと、
同性愛者への迫害など、事実がこんなにあったことに驚きます。
更に驚いたのは連続殺人の方法は小説よりもっと陰惨でした。
小説はあれでもかなり綺麗に書いていたんだなあ。。。
それ以外には犯人と間違われて処刑されたり、疑われて自殺者が何人も出たりと、
この事件にかかわる死者数は驚くべきものでした。

 

知りませんでしたが「チカチーロ」という映画も作られていたようです。見たくないけど。。。。