吉祥読本

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新撰組顛末記 ::永倉新八

これも京都に持っていった本です。章が短いので「榎本武揚」が中途半端になりそうなちょっとした隙に同時に読みました。
京都が出てくる頻度はこちらのほうが圧倒的に多かったので榎本武揚での京都の地名の記憶はこの本と混同しているかもしれません。(記事を書いていて気付きました。混同していたらスミマセン!)

 

安部公房の「榎本武揚」に描かれる新撰組の敗走は、土方歳三が中心だったが、
そこに新撰組の中心人物の一人、二番隊長永倉新八も合流していた記述が少しばかりあった。
そこで描かれていた永倉は古臭いタイプの男であり、武骨で不器用な男として描かれていた。
土方とは、ことある毎に対立し最後には居場所が無くなり、いつの間にか姿を消してしまう。
読者からしたらあまり印象の良くない存在になってしまったが、勿論違う見方で永倉を見てみないと不公平だろう。
この2冊をセットで読んだのは正解だったと思う。(でも記憶が混同するのもどうかと思うが 苦笑)

 

本書は小樽新聞で連載された記事が基になっているようで永倉が書いた事になっているが口述だった部分もあり、記者が書き足したところもありそうな印象だ。
新撰組幹部の最後の生き残りの証言ですからそれは貴重であり、現場で体験しているものならではの生々しいものを感じる。
新撰組ができたときや、池田屋襲撃のシーン、隊内の人間関係など、その場にいた者ならではの話は興味深い。
永倉自身の行動にあまり一貫性を感じないなあ、と思う反面、その場その場で命の遣り取りをしていたことを考えれば瞬間的な判断で本能的に動いていたのだろうとも思え、リアルさも感じる。
多少自画自賛めいたものも感じるし読み辛い箇所も結構あるが、おじいちゃんの自慢話や体験談を聞いていると思って読むといいでしょう。

 

巻末には新撰組に所属していた隊士たちの名前や役職などが列挙されているが
これだけでも興味のある人にとっては貴重な資料ではないでしょうか。