吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

マリアビートル ::伊坂幸太郎

グラスホッパー」の続編のような作品でした。勿論「グラスホッパー」を読んでいなくても問題ない作りになっていますが、随所につながりのある人物名が出てきます。
う~ん、やっぱ読んでおいたほうがいいかも(笑)
そこに「ラッシュライフ」や「陽気なギャング~」のテイストが入ってる感じです。
作家さんからすればこんな書き方をされるのは嫌かもしれませんが(笑)
更には「魔王」で描ききれなかった(わかりにくかった)ものが補填されて(説明されて)いるように思いました。
それを体現するのが登場人物の一人、狡猾な中学生の「王子」。
名前も「王子」ですし、いずれ魔王に?(笑)
でもって、こいつ!目の前にいたらきっとむかつくんだろうなあ、ってキャラなんです。いやホント。

 

映画っぽい作りで、舞台は新幹線の中という密室で殺し屋たちの戦いが繰り広げられます。
登場する人物はみんな殺し屋なのですが、木村、蜜柑と檸檬コンビ、七尾をはじめ
魅力溢れるキャラクターたちの丁々発止のやりとりはテンポ良く、軽妙な会話の連続でもありました。
やはり完全にかつての伊坂ワールドが戻ってきた感じです。
相変わらず回りくどさも感じますが決してそれを否定しているのではなく、らしくて良いと思います。
できれば新幹線の見取り図を付けてくれるとわかり易かったんですけどね。

 

色々書きたいのですが、どれをとってもネタばらしに繋がってしまいそうで控えたほうが良さそうです。
差し支えないと思うので、印象的な台詞だけ挙げておきます。

 

「昔から存在しているものは、それだけで優秀だ ~ 生き延びているんですから、勝者です」



伏線の回収もいつものように良かったし、意外な展開も楽しめたし、他作品のリンクなどもあったし、クライマックスも痛快です。
グラスホッパーはあまり評判が良くなかった記憶がありますが、あの作品がダメでもこちらなら安心して楽しめるエンタメ作品になっていると思います。
それと「機関車トーマス」の知識があれば、なお良いかと(笑)