吉祥読本

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モダンタイムス[特別版] --伊坂幸太郎

講談社BOOK倶楽部より引用
検索から、監視が始まる。
漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品 最長1200枚
岡本猛はいきなり現われ脅す。「勇気はあるか?」
五反田正臣は警告する。「見て見ぬふりも勇気だ」
渡辺拓海は言う。「勇気は実家に忘れてきました」
大石倉之助は訝る。「ちょっと異常な気がします」
井坂好太郎は嘯く。「人生は要約できねえんだよ」
渡辺佳代子は怒る。「善悪なんて、見る角度次第」
永嶋丈は語る。「本当の英雄になってみたかった」



把握していた発売予定日以前に売られていたのでとっさの判断でしたが、
なぜ「モーニング」に連載したのか、とずっと疑問だったこともあって特別版を購入しました。
装丁は通常版のほうが特別版よりいいですね(苦笑)
しかし厚い!寝ながら読んでると筋肉痛になりそうでした。持ち歩けませんよ、これは。



さて本題です。
「魔王」の続編とのことですから勿論「魔王」を事前に読んでおくほうがいいのですが、
必須かというとそれほどではないように思いました。
チャップリンの映画「モダンタイムス」は観ておいてもいいかもしれません。

 

伊坂自身も書いていますが「ゴールデンスランバー」テイストが強いな、という印象です。
大きな意味での基本コンセプトは魔王で伝えたかったことと同じであり、ゴールデンスランバー風に
仕上げた感じです。
大きなシステム、責任者不在の「空気」による支配システムの中で主人公たちがどのように行動するか、
何を考えるか、という物語りですね。

 

特別版を読んだので折角ですからそれに沿って自分なりに感じた事を書きます。
なぜ、モーニングというマンガ雑誌に連載したのか?
最大の謎だったのですが、伊坂さんはマンガを小説で表現したかったんではないか?と思いました。
挿絵があるため、イメージが浮かびやすいと言うのはありますが、文章自体は連載を意識して
ショートレンジな盛り上がりを随所に用意しているように思います。
マンガ的な刺激的シーンの強調や、場面展開も多かったと思います。
拷問シーンなどが必要以上に長く、具体的だったのはそのためだったのでしょう。
普通の書下ろしであれば、あそこまでの拷問シーンは不必要だと思います。
ただ陰湿さがあまり感じられず、そんなシーンであっても伊坂さんらしいなと思ってしまいます。
主人公の妻、渡辺佳代子の行動力は最もマンガ的なキャラクターかもしれません。

 

伊坂さんはマンガを小説で表現したかったんではないか?と思った理由のひとつに
伊坂さんが大友克洋さんの「童夢」に影響を受けている、という点にあります。
「魔王」に書かれていた「超能力」が本作品ではより大きく扱われています。
「童夢」と「AKIRA」的要素を小説で表現してみました、みたいな伊坂さんの実験だったんでは?
という印象を受けました。
勿論これはあくまで推測なので適当です(笑)
挿絵を花沢健吾さんと言う方が描いているのですが残念ながら私は知りませんでした。
花沢健吾さんには申し訳ないのですが、大友克洋さんが挿絵を描いていたら、
もう千円高くても買ったと思います。
でも大友さんに全部持っていかれて大友ワールドになってしまいそうですが(笑)

 

特別版を読んだために、より漫画的との作品イメージを持ったのかもしれません。
伊坂さんも挿絵からも影響を受けているとも描いていますし。
自分の読後間としてはあまり挿絵に影響を受けた気はしないのですが、
通常版を読んだ方の感想が楽しみです。



最後に、いつも心に残るセリフが何かしら散りばめられている伊坂作品ですが、
今回は「井坂好太郎」なる人物が主人公の渡辺の友人として出てきます。
その井坂の「人生は要約できねえんだよ」のくだりには最も共感できました。
お遊びキャラ?ではありますが、伊坂さんが一番言いたかったことを代弁していたキャラだったと思います。

 

伊坂さん得意の伏線を張り巡らせ、キッチリ回収するタイプの作品ではないのですが、
エンタメ作品としては楽しめました。



ああそれと、勿論、作中に出てくるキーワードで検索かけましたよ。勇気を持って(笑)

 

ああ、そんな仕掛けが!!



この記事をアップしたままブログ更新が止まったら、私の身に何かあったと思ってください(爆)