著者:リチャード・ロイド・パリー
翻訳:濱野大道
出版社:早川書房
書店で気になっていながら読む機会を逃していたが、文庫で見かけたので即買いした。
東日本大震災を英国人ジャーナリストが長年にわたって取材したノンフィクション。
時に読むのが辛くなり、少し置いてから読んだりもした。
地元の人たちに密着しながら、根気よく聞き取り、外国人ならではの切り口、
言葉で日本の文化や宗教観などを含め震災の悲劇を浮き彫りにしている。
特に多くの犠牲者を出した大川小学校の遺族の方々や、
被災者のカウンセリングをした僧侶からの聞き取りをもとに提示される著者の考え方は
冷静でバランスが良い。
外国人から見ればきっと色々言いたいだろうに。
著者が言うように日本人は声を上げることが他国に比べると少ないが、
だからと言って声を上げないと変わらないこともあるわけで、
それが被災者同士の分断を招いてしまうのはあまりに切ない。
語りたくない被災者もいれば、語りたがる外野もいる。
遺族の悲しみ、心の移り変わり、被災者の分断など、
上辺しか知らなかった事を痛感する。
2年ほど前、今も伯母さんが見つかってないんだよね、と知人が言っていた。
あれから今年で10年。
日本は自然災害を無視することができない環境にあるわけで
過去の経験を失敗も含めて顧みながら先々に伝え、生かさないといけないのに
なぜか喉元過ぎれば何とやらということが多い気がする。
明日は我が身。
コロナ禍において団結どころか分断と無策のオンパレードに嘆息する。