確かに謎SFである。装丁もホワホワしていて味わい深い。
日本ではまだ馴染みのないアメリカと中国の作家の作品を
柴田、小島両氏が紹介してくれているアンソロジー。
印象深い作品をいくつか挙げる。
およそSFらしくない題名の「マーおばさん」は、中国人作家ShakeSpace(遥控)の
作品だがなんとまあ蟻とコンピュータを組み合わせた内容に一気に引き込まれる。
とぼけた発想だが面白いのだから仕方がない。
本書の中で最も阿呆(失礼!)な作品、「焼肉プラネット」(梁清散)には
くだらないと思いながらも想像すると気持ち悪い情景が頭から離れない。
題名通り、そのままだんだよね(笑)
「改良人類」(王諾諾)は、コールドスリープで600年後に目が覚めた男の見た
ある意味ディストピアともいえる世界が描かれる。
遺伝子操作による皮肉な状況に、さて同じような判断ができるだろうか。
「降下物」(マデリン・キアリン)は、核戦争後の世界を静かに描き出していて
「渚にて」を思い出した。
「猫が夜中に集まる理由」(王諾諾)は「シュレデンガーの猫」とリンクしている
小品だが、けなげな猫たちに琴線を刺激される感じ。
もちろん「シュレデンガーの猫」は説明できないが、何となく雰囲気でってことで。
王諾諾は本作で唯一、2作品収録されtてるが、わかる気がする。
他の作品もなかなか面白かったので思いも寄らぬ拾い物的なアンソロジーでした。
[メモ] 作品と作家
「マーおばさん」 ShakeSpace(遥控)
「曖昧機械―試験問題」 ヴァンダナ・シン
「焼肉プラネット」 梁清散
「深海巨大症」 ブリジェット・チャオ・クラーキン
「改良人類」 王諾諾
「降下物」 マデリン・キアリン
「猫が夜中に集まる理由」 王諾諾