吉祥読本

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映画を早送りで観る人たち-ファスト映画・ネタバレ-コンテンツ消費の現在形

著者:稲田豊史 
出版社:光文社


題名通りの新書だが、考えてみたことのない内容だったので

勉強になったというか何と言うか。

ファスト映画サイトの存在は知っていたが興味が無かったので見たことすらない。

話題に遅れたくないのだろうくらいは予測できるが、もう少し切実なようだ。

製作者からすれば早送りで鑑賞されたうえで批評されたら堪らないだろうが、

批評することよりコンテンツの「消費」の仕方がそもそも違ってきているようだ。

映画やドラマなどを鑑賞する行為を「消費」と表現することに違和感を覚えるが、

現状はこの表現がピッタリなのかもしれない。

SNSという環境が多くの人の人生にとって大きなウェイトを占めていることは

誰もが認めるだろうが、人と繋がることを重視するあまり、

多くの情報を集め、様々な属性の人たちと情報を共有すること、

共感する事のために少ない時間で情報を収集することが目的化している。

そのためであれば、製作者たちが伝えたいものの表現としての時間軸を

無視して結論のみを得ることも是とする。

確かにテレビドラマやバラエティ番組、アニメの早送りは経験があるし、

ある程度理解できるところはある。

これに関しては作り手側の意識の問題もあると思うが、

その事は置くとして、自己主張よりも、多くの共感を得ることで

仲間意識を持続することの方が大事なのか、

そんな時代なのかとおっさんは思うわけだ。

製作者側もそれらを踏まえて製作しているのだろうけれど。


読書(漫画)においては最初から作者の意図を探りながら読むことが

最良だと思ってきたので、結末を読んだ後に最初から読む人たちの存在には

疑問しかないのだが、映像同様、結果を知っているから安心して

読めるという人もいるのだなと宇宙人と遭遇した時のように驚かされる。

勿論、宇宙人と遭遇したことは無いのだが。

しかし、よく考えると再読する際には結論も経過も知っているのに

むしろ別角度の目線で楽しめるよなと思い至ると、

分からないことを否定するのではなく、時代は確実に変わりつつあることを

受け入れないと、と思うわけで、まあ人それぞれの楽しみ方をすればいいのか。

だけど再読だからいいと思うけど、やはり読書だけは自分のスタイルとして

初読みの際には最初から読むぞ。


あ、短編集の時は時間に合わせて短いものを先に読んでたりもするか。。。。

ま、いいか、いいよね。