著者:石川宗生/宮内悠介/斜線堂有紀/小川一水/伴名練
出版社:講談社
メンツが面白そうなので読む。
表紙がモロにラノベなのだが、今年読んできた日本SFの表紙がどうもラノベ風が多く、
買うのに抵抗が無くなってきている(笑)
ところで講談社タイガなるレーベル、知りませんでした。
様々な時代の歴史改変作品だが、それぞれ味があって楽しめた。
石川宗生の「うたう蜘蛛」は踊り続ける奇病を収めるための
雰囲気は良かったが他の作品に比べると物足りない。
宮内悠介の題名を含む開高健ネタは安定の面白さ。
事実と想像力が抑え気味の文体で絡まり、スッと読めてしまう。
斜線堂有紀の平安時代を舞台にした和歌と詠訳(英訳)という発想が
新鮮で驚かされた。
シチュエーションは違うが伴名練の「百年文通」と雰囲気が似ていると思うが
いかがだろうか。
小川一水の「大江戸石廓突破仕留」は玉川上水に毒を流した犯人を捜す
ミステリー調の作品だが、江戸の状況が徐々にわかってくると
なるほど改変SFだったことに気が付かされる構成はなかなか面白い。
ラストは未来の権力者たちの思惑によって繰り返される
ジャンヌ・ダルクの処刑の経緯と結末を描く伴名練で締める。
様々な人間の心理描写と結末への流れが空しかったり清々しかったり。
表紙で判断してはいけないアンソロジーだった。
【収録作品】
石川宗生 :「うたう蜘蛛」
宮内悠介 :「パニック――一九六五年のSNS」
斜線堂有紀 :「一一六二年のlovin' life」
小川一水 :「大江戸石廓突破仕留」
伴名練 :「二〇〇〇一周目のジャンヌ」