著者:パトリック・スヴェンソン
翻訳:大沢章子
出版社:新潮社
近頃ウナギを食していないなあ。
近所のウナギ専門の小さい店が無くなってからだから1年以上経つか。
気になっていた本作をようやく読む機会を得た。
アリストテレスやフロイトもウナギの研究をしていたとは知らなかったが
今でもかなり謎に包まれた存在であるウナギの生態を調べてきた人たちや
ウナギにまつわる話しと、著者の父親との思い出が並行して語られる。
最終的にはウナギの一生と人生について思いを巡らせてしまう良作。
ヨーロッパウナギはサルガッソー海近辺で産卵すると推測されているようだが
ニホンウナギ同様、長い距離を泳ぎ、産卵し、生を終える。
生まれた子供はまた各地の川を目指し驚くような生命力で生き延びている。
時期により体の構造が変わるため解剖しても生態がわからず、
膨大な時間と気が遠くなるような労力を費やしてきたことがよくわかる。
本作でウナギの生態をある程度知ると、食べることに罪悪感に襲われそう。
それでもおいしいウナギを食べる機会があったらきっと食べるんだろうが、
その時は感謝しながら頂きます。
土用の丑の日が近づくとスーパーなどで大量の中国産の大きなウナギが並べられる。
こんなに売れるわけないのにと居たたまれない思いがあったが、
どうするとあれだけの数のウナギが存在するのか疑問に思う。
どのように養殖されているのか少し怖いが、どうであれ勿体ない。
本作ではレイチェル・カーソンとその作品に関して度々触れられている。
レイチェル・カーソンの作品はほぼ読んでいるのにウナギに関した内容を
覚えていなかったので再読したい。