ウェルベック作品は「服従」、ラブクラフトの伝記かつデビュー作の
「H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って」に続いて3作目。
芸術家ジェド・マルタンの仕事に対するスタンス、家族や恋人との関係が
丁寧に描かれ、作中に登場させるウェルベック自身との会話は
特に芸術への造詣の深さに加えその商業的視点を交えて冴えわたる。
(芸術的、文化的知識不足で追いつけないのが難点だが。。)
作品が評価されても特に執着が無く、飽きて別の事を始めても
評価され大金を得てしまう才能は羨ましい限りだが、
作中のウェルベック同様、孤独を愛し、孤独に愛されているような
人生と向き合うのは、寂しいような共感できるような複雑な気持ちにさせられる。
第三部で突然大きな事件が発生してミステリ要素が加わるが、
孤独と向き合い、受け入れているジェドのある意味諦観を伴いながら
世界を描き切ろうとする様は一貫している。
静けさを伴うラストに充足感を味わうことができた。