著者:ウラジーミル・ソローキン
翻訳:松下隆志
出版社:河出書房新社
酷暑が続く日々の中で読む極寒の風景は何とも不思議な感覚だった。
暑さを中和してくれることは無かったが。
時代背景がわかりにくいロシアが舞台。
馬車がでてくるので古い時代かと思いきや読み進めるうちに何とも言えない
違和感が湧いてくる。
厳しい吹雪の中、感染症が広がる村にワクチンを届けようとする医師と御者の
道行が描かれる。
話しは単純なようだが読み進めると何かがおかしいのだ。
馬車だと思っていたのは50頭の小馬が動力の車?らしい。まさに50馬力。
ラジオを見る?どう言うこと?
凍死している6mの巨人?
SF的要素もあるがSF色が強いわけでもない。
様々な暗喩で語られるロシアの近未来は果たしてどうなるのだろうか。
中国人の登場は現実の状況を踏まえて示唆されているようにも思える。
ソローキンは「青い脂」以来だが、比べるととても読み易い。
中国人に助けられた医師のその後を描いた作品があるようなので、
翻訳されれば読みたい。