吉祥読本

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安倍晋三 回顧録

著者:安倍晋三
聞き手: 橋本五郎
聞き手、構成:尾山宏
監修:北村滋 
出版社:中央公論新社

 

事件から1年以上経過したが、ニュースを見ているといまだに名前が

出てくることから大きな影響力を持っていたのだなと改めて思う。


柔軟性のあるリアリストというのが読んでいて一番思ったこと。

強行突破するイメージもあるが、相手の意向を受け入れつつ、

柔軟にアレンジしながら自分の意見を受け入れさせてしまう駆け引きの巧さは

日本の政治家としては珍しく長けているのではないだろうか。


強く出れば日本は引くと考えてくる国に対しては

嫌がられるような反撃に出ることを厭わず、

面倒な相手だと思われるようにすることの必要性を説いていた。

確かにその効果はあったと思う。

外交手腕に関してはかなり評価しても良いでしょう。


時に聞き手(読売系)から厳しい質問もあるが、お互いのメンツを立てるように

バランスがとられているように感じる。

(嫌いな人に心を開いて話すわけもないしね)

大丈夫かな?と思うような率直な言葉に苦笑したり、

意外に配慮有る言葉に感心したり、人柄も伝わってくる。


首相ともなると誰であれ、色々なことを言われるもの。

特に左翼系からはかなり手厳しい批判が多く、それはそれで理解できなくもないが

理由の如何に関わらず批判している人たちも多いと感じたし、

いいところもそれなりにあったと思うのだが。

代案なく反対する人たちよりは何らかを示すほうが分かり易いしね。

今の世界情勢を考えると今こそ必要な人物だったような気がする。


菅義偉元首相の弔辞、野田佳彦元首相の追悼演説が全文掲載されているが、

これは何度読んでも素晴らしい。


日本の首相としての役割、外交、官僚、周りを固める政治家やスタッフ、

与党に対してどのように考えていたのか、どう行動したのかなど

知ることができたことは良かったと思う。

安倍晋三を好きか嫌いかは別にして、日本の政治を知るうえで

読んでおいても損は無いと思う回顧録だった。