吉祥読本

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最後の共和国 --石川達三

第1回の芥川賞は、石川達三が「蒼茫」で受賞している。
「社会派」と言われるだけあって多くの問題作を世に出している。

「風にそよぐ葦」「生きている兵隊」「人間の壁」なども読んだ。
確かにこれらは評価の高い作品なのだろう。
が、読んだのが高校生の頃から20歳ぐらいだったせいもあって、
結局一番印象に残っているのが、「最後の共和国」だった。

石川達三の著作としては珍しい部類に入るSF作品なのですが、
当時としては切り口が変わっていて関心させられた。
小説というより、世界の通信社からの配信記事という形で淡々と綴られ、
世界で何が起きているのか、少しずつ状況が見えてくるという手法をとっている。
短い文章でまとまっているので、時間の無い時には少しずつ読みすすめていける。

SFとはいえ石川達三テイストなので、社会風刺が効いている。
今読むと古臭さは否定できないけど、ロボット(機械、コンピュータに置き換えてもいい)と人間の関係、
変わり続けるモラルの基準など、これからも悩み、考え続けないといけない、
普遍のテーマが提示されているのだと思う。