以前書いた「アヒルと鴨のコインロッカー」でも触れましたが、伊坂幸太郎については作品に甲乙つけるのが難しい。
まず表紙のせいで読むのは当分あとでいいやと思ってましたが、
発売と同時に読むべきだったと思った。
表紙は大事だけど、あんまり気にすると損するな。
内容勝負だよね。
「砂漠」の主人公は男女大学生の5人である。
みんな魅力的だが、異色のキャラクター「西嶋」の存在がやはり大きいことは
読んだ人なら異論がないでしょう。
伊坂幸太郎の他の作品にもこんな人物は見当たらない。
この西嶋が本当にいたら鬱陶しい存在というのも異論はないでしょう。
そしてとても「いい男」であることも異論はないでしょう。
「俺は恵まれないことには慣れてますけどね、大学に入って、友達に恵まれましたよって、西嶋はずっと言ってた」
流れがわからないと何てことない台詞ですが、文字がボヤけて一旦本を置いちゃいましたよ。
おっさん泣かすなって。
「俺たちがその気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」
うんうん、その意気その意気。
恥ずかしくて、言いたくてもいえない台詞をいとも簡単に言ってのける西嶋には、とてもかなわない。
他のキャラクターは、こいつには勝てんよね。
そして学長の台詞もいい。
「学生時代を思い出して、懐かしがるのはかまわないが、あの時は良かったな、
オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」
「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」
砂漠の中で「砂の男」と化している今は感じ入るものがある。
オアシスに戻ることはできないが、あらためて肝に銘じよう。
途中、差し込まれるエピソードは学生時代のどうでもいいことだったり、
結構哀しいことだったりするけど全体的に爽やかで
最後は気持ちよく読み終わることができました。
「アヒルと鴨~」同様、ついに読み終わってしまうのか~
という何ともいえない寂しい感覚にとらわれました。
新作はいつになるのでしょうかね~
それから気になっているのですが、
私の中で「アヒルと鴨~」にでてくる「ペットショップの店長・麗子さん」と
本作の「東堂」って完全にイメージが重なっているんですけど、気のせいでしょうか?
麗子さんのフルネームって出てきてましたっけ?
東堂って、フルネーム出てきてましたっけ?
「東堂麗子」なんてことない?
どちらも読んでからずいぶん時間がたってしまったので覚えていません。
気付いている人いたら教えてください。