地球に隕石が落ちてくる3年前って設定はなかなか面白い設定だと思う。
多分死ぬだろうと予感している人たちを描くわけだから、
かなり動揺している人たちで溢れてそうなのに意外と落ち着いている。
本来なら悪あがきしている人たちを書くほうが劇的で、まあよくある設定でもあると思うのだが
その「期間」をとりあえず越えた後の世界に視点を置いた、
少しだけ捻ったアイデアが伊坂幸太郎っぽい。
8つの短編で構成されていて、それぞれの題名の付け方も無理やりな感もありつつご愛嬌か。
8篇中「太陽のシール」が一番印象に残ったかな。
3年後に死ぬ可能性が高い中でする「夫婦の選択」の話しはジワリとくる。
終末へ向かいながらも希望に賭ける二人を見守りたくなる。
一緒にオセロをやりたい気分だ。
その他の話しにも、死ぬかもしれない状況の中で淡々と日常の生活を継続している人たちが何人もいる。
父親の蔵書を読みまくる女の子やトレーニングを続けるキックボクサーは印象的で、
説明できないけどこんな感じでいられる人、好きだな。
伊坂幸太郎の作品には、印象に残る台詞が数多く散りばめられている。
決して難しくない言葉なのに、突然グッと来たり、ハッとする言葉を投げかけてくる。
それが気持ちよかったりもするんですけどね。
特に「鋼鉄のウール」に出てくる台詞は印象深い。
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの行き方なんですか?」
今、こんな質問をされたら、答えに困って考え込んでしまうと思う。
自分ならどんな行動を取るのだろう? と、何度も考えてみた。
答えは出ないけれど、こうありたい、と思う人はこの本の中にいた。
この本読めて良かった、と思う作品でした。