吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

太陽の塔 --森見登美彦

ついに森見の世界に踏み込みました。いずれ有頂天家族を楽しむための、遅いけどはじめの一歩だ。
それにしても朝の7時前に感想をアップする本じゃあないなあ(笑)



「BOOK」データベースより引用
私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、
水尾さんという恋人ができた。
毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!
クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。
失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、
日本ファンタジーノベル大賞受賞作。



読みながら思ったことは、京都の地理を知っていればなあ、ということ。
地理的イメージが涌かないのがもどかしかった。



読み始めのころに「へー」と思ったのが何気ない表現。

 

「遠い昔、私という男が誰からも愛されるふわふわした可愛いものであった頃」
「週末になると私は両親に連れられて公演に出かけ、一日中野原や木立の中をころころ転がっていたと言う」

 

雰囲気が伝わってきて、好きな表現だなあと思いました。
どんな子供だったんだろう、どんな家族だったんだろうと想像をめぐらせてしまいました。
ムチャクチャ細かいところですが(笑)



独特の言い回しと濃いキャラクターの行動は、読みはじめこそ馴染めなかったが、
慣れると(体臭が濃くなりはじめた頃か?)この捻じ曲がった世界観が俄然面白くなってきた。
伊坂作品の爽やかな登場人物たちとは正反対の男汁タップリのキャラクターたちに
親近感すら涌いてきた。(涌いていいのか??)
かといって、現実だったら入りたくないグループだし、彼らの妄想レベルにはとても
ついていけないだろう。



馬鹿馬鹿しいくも素晴らしい?妄想と現実の境界線の無さっぷりを楽しむ作品ですね。

 

会話もところどころ楽しめた。
「イケてない」イベントサークル「男汁」結成を企て、男ばかりで夏に開いた鍋パーティーで失敗し、
復讐戦として冬に開催した牡蠣鍋パーティー絡みの飾磨、井戸、高藪と私の会話には、
やけにウケてしまった。
また、敵?である遠藤との確執や関係、会話にも何度かクスリとさせられた。
しかしどいつもこいつも濃すぎる。

 

なかでも、重要な役回りを演じる飾磨が私に送信してくるいくつかのメールは面白く、興味深い。

 

「許さん。許さんぞお・・・・・・」

 

「幸福が有限の資源だとすれば、君の不幸は余剰を一つ産みだした。その分は勿論、俺が頂く」



ところで誇大妄想の源でもある「叡山列車」に乗る水尾さん、
きっと彼らをも凌駕するキャラクターの持ち主に違いない。
どんな女性なのか、興味が尽きない。彼らの妄想力の一部でもあれば、と思う。
いやいや、彼らの妄想ですら届かないか(笑)



完全に馴染めたかは疑問ですが、楽しめた作品でした。
また、ひとり読もうと思う作家、楽しみな作家が増えたことは喜ばしいことです。

 

ところで読み終わった私の体臭は、人一倍濃くなったのだろうか?
。。。か、加齢臭では「ええじゃないか」決してない「ええじゃないか」はず。ええわけがあるものか!