吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

熱球 --重松清

高校野球をやっている期間中に間に合うようにようやく積んであった本作を読了しました。
中継は見ていないのですが、選手の皆さんも応援している皆さんも暑い中、頑張ってください!



「BOOK」データベースより)
20年前、町中が甲子園の夢に燃えていた。
夢が壊れたとき捨てたはずの故郷に戻った悲運のエースは38歳、目下失業中。
父と、小学5年の娘と3人の同居生活がはじまった。留学中の妻はメール家族。
とまどう日々で見つけたあふれる思いとは。



重松さんらしい作品でした。
会社をやめ、妻は海外に単身赴任しているなか、苦い思い出のある田舎に娘と共に帰り、
自分や過去や家族を見つめなおす時間を過ごしながら再生していく物語です。



過去にあった不幸なできごとから目を背けてきた主人公の「ヨージ」は田舎に帰ることで
過去の出来事に対峙せざるを得ない。
しかし素直に受け入れる事もできずに、娘である美奈子に助けられながら過去と現実に
向き合ったり悩んだり。
高校時代、共に野球部に在籍し、今は地元で生活している亀山、神野そしてマネージャーだった
恭子たちもそれぞれ違う環境で過去をひきずりながら現実と向き合っている。

 

どの人物にも共感できる部分がある。
どの人物にも「こうしたらどうだ?」と声をかけてみたくなる。
どの人物の気持ちも聞いてあげたい。

 

一概には言えないが38歳といえば仕事的にも家庭的にも責任が肩にのしかかってきて、
不自由な事ばかり。
若いうちには考えてもいなかったこと、それくらいの年齢にならないとわからない事が
いっぱいあるなあ、なんてことを改めて考えた。

 

この物語りのなかでひたすら彼らを叱咤激励する「ザワ爺」の存在は、鬱陶しいが愛おしい。
無条件で「ようがんばった、ようがんばった」と応援してくれる人がいることのなんと幸せな事か。

 

人生は勝ち続ける事ができないのだ。
負けていいのだ。いや、負け続けることのほうが多いのだ。
そして時には逃げていいのだ。

 

負け組みとか勝ち組とかつまらない言葉遊びやくだらないカテゴライズで一喜一憂している人たちには
決して届くことはないと思いますが、このメッセージは、ある年代を超えると普通に響いてくる
メッセージでしょう。



受け入れること、受け入れてもらうことはきっと誰にでもできることなのだ。

 

「これでいいのだ」   と、いつか思えるのだ。

 

と、赤塚先生も言っているのだ。(合掌)



・・・・・あれ?