吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

あたりまえのこと --倉橋由美子

「BOOK」データベースより引用
小説を楽しむためのヒント教えます!よい小説を書きたい人、面白い小説を読みたい人、
すべての小説好きに贈る最初にして最後の小説論ノート。
宣長から鴎外、カフカ、谷崎、クノー、ハイスミスまで古今東西の文芸作品を渉猟する
倉橋流辛口小説指南。



ブログを始めてから文章書くって難しいなあ、と痛感します。
こんな感想を書くだけでも悩むわけですからプロは凄いなあと、改めて思うんです。
そのくせ、プロの作品に偉そうに毒づくことがある自分は一体何者なんだと思うことも多いのですが(苦笑)

 

古典と言われるような日本文学、海外文学はあまり読んでいないので
作家さんのエッセイを読んだり書評家さん、批評家さんの文章を読むと悔しい思いをする事が多い。
読んでいればこの作家さんたちの言っていることが楽しめるのにと、出典を割り込ませて読みたくなる。
桜庭さんや恩田さんのような読書家は、きっと違うレベルの楽しみ方をしているんでしょうね。

 

同様に倉橋さんもかなり読み込んでるんだなあ、って感じられます。

 

「小説論ノート」、「小説を楽しむための小説読本」のパートに分けて書かれている文章は知的で
冷静でそしてピリっとする小説論となっています。
取り上げる作品の多くを読んでいないので明確には言えませんが、
自分としてはそんな切り捨て方をしなくてもいいんじゃないかなあ、と思うことも多々ありました。
勿論、人によって面白さや嗜好は違うのですからそれも仕方がないのですが、
もし自分が作家だったらへこむだろうなあ。
読者自身にも反省を促されているかのような文章があってドキリとしました。。。

 

内田百や坂口安吾に関しては倉橋さんがかなり好きな作家さんなのか褒めてましたが、
例えば百先生の作品を「つまらないことでも面白く書くことができる」作家として
何度も褒めているので本気なんでしょうけど、微妙な感じもします。

 

一方、三島由紀夫太宰治などは軽く一蹴されている感じがしますし、
(いや、一回りして評価しているのかもしれません)
村上春樹のある作品に関しては結末を引用したあげく「こんな夢みたいなことは本当はありません」
と断じたので、その作品を読んでいないにもかかわらず笑いそうになりました。
その作品を読むことはないだろうなと思っていたのですが、さすがにそこまで言わなくても。。。。
おかげでその作品を読んでみたいと思ってしまったので実は倉橋さんの高等戦術なのかもしれません(笑)

 

倉橋さんの作品は硬質な文章でとっつきにくい印象を持っていたがために敬遠してきました。
確かに硬質な文章ですし、斉藤美奈子さんの批評とは対極にあるもですが、
そこまで言うならどれどれ試しに読んでみようかなと思わされたのは、
やはり倉橋さんの高等戦術なのでしょうか(笑)

 

そしてやはり、危惧したとおり、桜庭さんや恩田さんのエッセイ同様、
引き合いに出されていた作品を読みたいと思ってしまうのでした。



本書の「あたりまえのこと」って自分にとっては当たり前なことじゃないと思うんですが(苦笑)、
来年は公私共に当たり前のことを地道にこなしながら精進していきたいと思います。