吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

百年の誤読 --岡野宏文、豊崎由美

「BOOK」データベースより引用
稀代の本読み2人が、20世紀100年間のベストセラーを読みつくす!徳冨蘆花の『不如帰』や与謝野晶子『みだれ髪』から始まり、渡辺淳一の『失楽園』、五木寛之の『大河の一滴』まで。明治・大正の文豪から昭和の重鎮までを、俎上に載せて語りつくす。
意外な本に感動したり、今読むと驚くほどつまらない作品だったり…。読書の喜びを教えてくれる一冊。


本を沢山読んでいる作家さんの作品を読んでると、和洋問わず古典の文学作品を読んでいないと
楽しさがあまりわからない、わかったつもりでも実は作者の意図は別のところにあるのでは?
と思うことがよくあります。
恥ずかしながら古典文学なるものはあまり読んでいないので、読まないとなあと思いつつサボり続けています。
まあ、目先の面白さに弱いのも確かなのですが。
そこでダイジェストで文学がわかると良いなあ、というモノグサというかヨコシマな気持ちを刺激した本がこれ。
文庫が出るや、すかさず買い求めていたものです。
読み始めは去年の末くらいで、江坂遊さんの作品ととっかえひっかえ少しずつ読んでました。

20世紀の日本の作品を10年ごとに区切り、その期間のベストセラー作品を中心に取り上げているのですが
脚注と本文を行ったり来たりすることが多いのでちょっと読みにくかったです。
でも脚注はそれ単独でも面白かったりもしますから、たいした問題ではありません。

豊崎さんは相変わらずの辛口ですが、ズバズバっとしてて好きです。
お二人の会話全てに納得はできませんし偏っているなあと感じることもしばしばですが、それはそれで色々です。
ただ取り上げられている本たちを読んでいれば、よりこの本を楽しめたのになあって結局思いましたし、
そんなにケチョンケチョンに言う本ってどんな本?などと興味が涌いてしまいます。
勿論、褒めている作品もちゃんとありますのでそれはそれで興味が涌き、結局ほとんど読みたくなるんです。


最も印象に残るのは今話題の人、村上春樹の「ノルウェイの森」について。
かつてこの作品を貶した事を謝りたい、という豊崎さんと岡野さん。再読した結果、

「本当に目の覚めた思いです。十五年を経て読み返し、ようやく面白さのわかったワシらって、「ざんげの値打ちもない」?」

という結論に達したようです。
簡単にわかった気になることもなく初読で正直に叩き、再読して素直に再評価できるところにプロ根性を見た気がします。
村上春樹を評価できていない自分にもいずれ理解できる日が来るかも、と勇気付けられました。
ただし、それによって何人かの作家さんがとばっちりを受け、バッサリとやられていましたが。。。

少しだけ文字を読みたい、という時にはちょっとだけ取り出して読める便利な本だし、
軽妙な語り口の二人の会話は楽しめるし、10年ごとの年表も何気に役に立ちそうですね。(何に?)
いずれ海外編も読もうかと。