吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

青の炎 --貴志祐介

この作品はかなり評判が良かったようですね。
非常に書きにくいのですが期待が高すぎたせいか、辛口気味です。
ミステリーっぽい印象を受けなかったのですが、とりあえずは思ったままをつらつらと。

読んでいて感じた印象は全体的に会話が古臭いなあ、ってこと。
アルキメデスは手を汚さない」(小峰元)を再読した時の感覚と同じでした。
アルキメデスは~」は確かに古い作品なので仕方が無いのですが、同時期の作品か?と思ったくらいです。インターネットとかは使っていますけど・・・

頭脳明晰な主人公は、理屈っぽい高校生の精一杯の気負いを表現されているのかもしれませんが「黒冷水」(羽田圭介)の主人公とも印象が似てしまい、「アルキメデス~」の主人公と共に、またこのタイプかと思ってしまいました。
完全犯罪を行おうとする高校生は優秀じゃないと話しにならないのかもしれませんね。

それにしても医学的な知識なども専門書を読んだだけで理解できてしまうなんて優秀すぎ。自分の高校時代と比べることは意味がありませんが、優秀な高校生はこんな思考回路を持っているのでしょうか。(ただの僻みです)

母親や妹を守るため殺人計画を練る、というのは理解できる範囲ですが、ではそれ以前に実験的に行っていた二人の同級生に対する意識のコントロールは一体何か。中学生の時に、というのがひっかかる。
そもそも二番目の事件に関しては意図的ではないにしてもこの行動が影響している。
もともとそのような性質を持っていた人間が大義名分を手に入れたことにして行動してしまったのではないか?
だとしたら二番目の事件の短絡的な行動にも説明がつく気がします。

結末は見えてしまったのですが、もっと悲劇的な結末を頭の中ではシミュレーションしていたため、そこまでいかなくてよかったなと思いました。

辛口になっていますが、高校生の青くささ、稚拙さをうまく表現していると思います。
また、犯罪を起こした高校生の追い詰められていく心理などもうまいですね。
どう切り抜けるんだろう?と読んでいてもドキドキしました。
こういう心理描写は得意な作家さんなのでしょう。

アルキメデス~」同様、若い頃に読んだらこの作品には共感できたのかもしれません。読む時期が大事な作品ってあると思うのですが、これはその中の一冊という気がします。「黒い家」がやけによく出来た作品だったがゆえに厳しい読み方をしているのかもしれませんが、まだまだ読もうと思っている作家さんです。次はやはりホラーがいいかな。