吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

LOVE --古川日出男

「。。。。だねぇ」


今まで読んできた古川作品で困ったなあ、とか訳わかんね~なと思う作品がいくつかある。
ボディ・アンド・ソウル」とか、「ハル、ハル、ハル」とか。
本書もなんて言うか、リズム感がつかめなくて、これは裏打ちで読めばいいのかなとか
自分の知っているロック系の曲を浮かべて読んでみたりとか試行錯誤してみたけど
全然ダメで一旦読むの止めようかと思ったくらい。

で、あきらめかけたその頃、「ブルー/ブルース」を読んだところで来た来た来た!
「ここに宣言するの。二十三区の小学生よ、団結せよ」

これで読み続けることができた。リズムが掴めた訳じゃないけど、それでもいいやと思った。
サウンドトラック」の女子高生が小学生に変わったのかな。ネコに変わったのかな。
そう思ったら読み続ける事ができた。

ベルカが犬小説ならこれは猫小説。
東京の目黒や五反田を舞台に野猫を数える子供から婆さんを含む男女と猫の物語、なんだけど
彼らと猫を追いかけていくと刻々と変わっていく分布図が見えてくる。
決して固定することなく新しい分布図が拡大し、一方では収縮する図が見えてくる。
ラストは感覚的に面白かったというか、好きだなあと思えるようになっていたんだけど
いつもながらその感覚をうまくテキストに起こせない。

物語の最後に登場人物たちの現状が短く書かれていて、その中の「トバスコ」の現状に笑った。
やけにツボに入って、大げさだけどこれだけで読んで良かったと思ったくらいだ。
で、実はこの部分はこの作品の本質を端的に表現もしてるんじゃないかと感じた。


この作品、最新刊の「MUSIC」と関連してるみたいだが、余韻のあるうちにすぐ読むべきか
少し間を置くか、悩みます。題名を考えてもリズムが合わないときつそうだし。
そういえばあとがきに「ゴッドスター」とも同じ流れ、みたいなことを本人が語っているので
そっちを先に読むべきかな。
やっぱり、悩みます(笑)