吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

倉橋由美子の怪奇掌篇 ::倉橋由美子

夜になると体を離れて首だけが恋人のもとに通う娘の怪しげな恋慕と残酷な死「首の飛ぶ女」。
長風呂がたたってガイコツになった少年の病名は突発性溶肉症と診断された「事故」。
夢の中に現われる世にも醜悪な男のたくらみ「交換」。元宰相ボーブラ氏はいかにして
カボチャ顔になったのか「カボチャ奇譚」など、幻想・残酷・邪心・淫猥な世界を、
著者独特の文体でえぐりだす怪奇短編20編。(「BOOK」データベースより)



この作品は現在「大人のための怪奇掌篇」と改題されています。

 

ひとつひとつの作品は数ページのため、あっという間に読めてしまいます。
どの作品にも上品さが感じられ、洗練されているという言葉がよく似合います。
が、グロさとエロさとがチラチラと見え隠れした幻想的な世界も織り込まれています。
「大人のための怪奇掌篇」と改題しているように大人向けの幻想小説ですね(そのままじゃん 笑)

 

その中で印象的な作品は夜な夜な首だけがどこかに飛んでいってしまう「首の飛ぶ女」、風呂に入っていたら骨だけになってしまう少年の顛末を描く「事故」、自分の体から不思議な会話が聞こえ始めた男の戸惑いを描く「革命」などでしょうか。
一番の傑作は「革命」でしょう。
子供の頃から蟹が嫌いな男の身体から自分にしか聞こえない会話が聞こえるようになる。
それらは蟹を自称し、どうやら革命に関して話し合っているようだ。。。。
これだけだと何がなにやらわからりませんが、結末を読むと良くできた作品で、怖かった。

 

全体的に不思議な状態に置かれた登場人物たちが妙に落ち着いているのも大人のための~に繋がるのかもしれない。
例えば「事故」の少年が骨だけになってしまったときの母親の言葉が変だ。
 「しようがない子ね。骸骨になるまで長湯をする人がありますか。
  大体あなたは年寄りみたいにお風呂が長いんだから」
もう少し慌てなさいって(苦笑)

 

これをふくめ、あっさりと受け入れ、諦めているシーンが多かったように思う。
その冷静さが時間差でちりちりと妙に怖さを呼び寄せている気がします。

 

ところで、いくつかの作品に既読感がありました。
「ヴァンピールの会」「首の飛ぶ女」など、確実に読んだ気がしますし、あと数作、なんとな~く既読感があります。
随分前に読んだのかなあ?でも持ってないんですよね。多分。
自分の記憶が無くなっているのだとしたら、それが一番怖いです(汗)