吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

伊藤計劃記録 ::伊藤計劃

いくつかの短編とインタビュー記事と、映画評などを収録する著者最後の本です。

 

まず短編4本。

 

The Indifference Engine
 内戦で異民族を殺す事が正義と教育された少年兵の姿を描く。
 「虐殺器官」に繋がるであろう短編だが、現実に起きている事でもあり、
 大人としては目を背けてはいけない事を痛感する。

 

「セカイ、蛮族、ぼく。」
 とても短い作品ながら妙に印象的。蛮族なんて言葉、最近使わないし。昔も使わないか(笑)

 

「From the Nothing,With Love.」
 意識をデータ化し、バックアップをとりながら別の人間に再生していき続けるスパイの話。
 これも「メタルギア~」とか「ハーモニー」とかに繋がっているのでしょう。
 あと、クリスティファンはちょっとだけクスリとできるかな。

 

屍者の帝国」(未完)
 ご存知ヴァン・ヘルシング教授が出てくるのだが、未完の作品で冒頭しかなく、
 とても短いがどんな展開になるのか、どんな結末を考えていたのか
 無理とはわかっていても知りたい。とても面白そうなだけに、とても残念。



次にインタビューなどなど。
次の作品は「ディファレンス・エンジン」みたいな物を考えている、というインタビュー記事にああ、読みたい!と思った。
どんだけ「ディファレンス・エンジン」が好きなんだろう。
ディファレンス・エンジン」関係の記述が多いし、短編の「The Indifference Engine」の題名だって影響受けまくりです。
あの世界観は確かに印象的だが、正直再読しないと語れないのが残念。
いずれ再読するのだ。スチームパンク
その他にはギブスンやイーガンにも影響を受けているようです。

 

同様に小島秀夫監督のどんだけファンなんだ!ってくらい愛情タップリの文章は熱くて
読んでいて涙が出そうなくらいだ。読んでいるこちらまで小島秀夫ラヴになりそうだ。
円城塔との対談なども面白く、やはり円城塔は無視できんなあと感じる。



最後は映画評31本。
著者の映画評ははじめて読んだ。観ている映画評に関してはあたりまえだが自分とは違う評価もあるが読み物としては非常に面白い。
ユーモアに溢れ、鋭く、時に黒い(笑)。ヲタぶりも見事に発揮されている。
観ていない映画に関しては是非観てみたいと思うし、既に観ている作品も再度観て確認したいと思わせてくれます。映画好きな人はこれだけでも読む価値はあると思います。

 

映画評はまだ未収録のものがあるようです。是非、全ての文章を余さずに書籍化して欲しい。
著者の書籍化されている作品を読みきってしまったので、彼の遺した文章を、全て読みたいのですよ。
そして全て手許に置いておきたいのですよ。。。