吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2015年1月の読書リスト

強い北風が続き過ぎ。寒いというか、痛い。



 2015/1/5読了
 /離陸
 絲山秋子
 慌ただしい年末年始にゆっくり読んだが、読んでいる間だけとても静謐な時間を
 過ごしていたような気がする。
 今までの絲山作品の「らしさ」がふんだんに散りばめられ、ミステリ(伊坂幸太郎
 女スパイ物をリクエストされたらしい)と珍しくタイムスリップのような要素が
 絡んでくる。
 タイムスリップやミステリ部分の肝心なところは多分意図的に解決させていないが、
 この物語の主題でもないので気にならない。
 多くの参考文献、丁寧な取材の成果により、物語の厚みが感じられ、
 誰しもが経験する「離陸」に思いを馳せる時間を堪能した。



 2015/1/12読了
 ::シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕
 タイラー・ハミルトン/ダニエル・コイル
 ランス・アームストロングの名前は自転車競技に詳しくなくても知っていたが、
 ここまでドーピングが組織的に、広範に行われていたとは驚かされる。
 自分を追い込みながら高みをめざし、真摯にレースと向き合おうとすればするほど
 闇に包まれていく状況にきっと自問せずにはいられないだろう。
 「自分ならどうしただろう」と。



 2015/1/17読了
 /英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄
 ヘンリー・S・ストーク
 イギリス人識者から見ても不当な、戦勝国による歴史観を日本人はもっと
 意識すべきでしょう。
 周辺国から強く言われるだけで何も発信しなことが、そして間違いを
 否定しないことがどのような結果をもたらすのか、よく考えるべきでしょう。
 勝った者が都合の良い歴史を作っていくのはどこでも同じ。
 それぞれの国が異なる意見を持つのは当たり前のこと。
 日本が自己主張しようとするとすぐ右傾化と短絡的に騒ぐ人たちに
 ぜひ読んでほしい。
 ただ内容は別として、文章はもう少し読み易い構成にしてほしかった。
 翻訳の問題か?



 2015/1/21読了
 /『遺言』 闇社会の守護神と呼ばれた男、その懺悔と雪辱
 田中森一
 検察官を経て弁護士となり、バブル当時有名だった裏社会の大物たちとの交流や
 詐欺事件の有罪判決による獄中生活などが語られ、「波乱万丈の人生」という言葉を
 見事に体現した人物であることがよくわかる。
 確かに昔はこの手のタイプのエネルギッシュで怪しい人たちが多かったことを
 思い出した。



 2015/1/28読了
 ::大脱走 英雄〈ビッグX〉の生涯
 サイモン・ピアソン
 スティーブ・マックイーンをこよなく愛する者としては、そのきっかけとなった映画「大脱走」は
 当然大好きな作品である。
 その映画の中で、昨年亡くなったリチャード・アッテンボローが演じていた
 「Big X」の生涯を描くノンフィクション。
 戦線維持が難しい状況で本来ならば脱走兵のことなど構っている場合ではない
 ヒトラーを激怒させ混乱を招くという、最前線とは違う闘い方に情熱を捧げた男。
 映画で描かれた内容に疑問な部分もあったが、納得できたので久しぶりに再度
 観なおしたい。



 2015/1/31読了
 ::バーボン・ストリート・ブルース
 高田渡
 「いせや」の前を通るたび、昼間からカウンターで立ち飲みする高田渡さんの姿が
 毎日のようにあった。
 たまに居ないと今日はまだかな?体調が悪いのかな?なんて思ったものだ。
 渡さんが亡くなって10年。
 まるで後を追うかのように「いせや」もリニューアルした。
 なんだかこの街の一時代が終わってしまったような寂しさを覚えたものだ。
 あちら側に旧「いせや」ごと持って行ってしまったのか?
 しばらく温めていた本書をようやく読んで、なんだか懐かしくなってしまった。
 いずれ離陸したら旧「いせや」にてご相伴に与りたいものだ。




6冊読了。