「天下人の茶」では秀吉と利休の関係を、周囲の人からの視点で紐解いていたが、
本作はがっつりと利休の内面が描かれていた分、格段に面白い。
信長、秀吉に重用され、茶の湯で武人を鎮め静謐を求め続ける利休の生涯が描かれる。
本書の肝は静謐な世の中を目指すために天下人を操ろうとする利休と、
茶の湯を利用して天下を操ろうとする秀吉のギリギリの心理戦である。
数多くの人物が登場するが、それぞれの人物を効果的に簡潔に描いているので
あまり邪魔にならず、むしろ心理戦を盛り上げていた。
利休の戦略が凄すぎるので実際はここまで巧くいくだろうか?
とも思うが、結局最後まで勢いを失わずに読めた。
利休、秀吉共に目指す目的のために利用されていることを知りながら
利用もするという表裏一体のしたたかな共存関係が面白い。
心理戦とは別に家族との関係にも多くのページが割かれていて
それが長い作品にメリハリを与えていたと思う。
「天下人の茶」でも思ったことだが、千利休恐るべし!
このまま「じんかん」を読む予定だったのですが、
図書館本が一気に来てしまいました。
うまくいかないなあ。
2020/7/2読了