わずか130ページにゆったりと描かれる世界は夢か現か。
冒頭に書いてあるように、若い妻との新婚旅行の話しである。
夢の話しなのか、幻想なのか、曖昧な時間の展開や
不思議な登場人物たちの存在など何もかも不確かなものばかり。
何が語られているかもわからない。
それなのに妙に艶めかしかったり。
理解しようとしても仕方が無いので他人の夢に入り込んだとばかり
その幻想世界をそのまま読み進んでいく。
どこの国なのか具体的な地名も出てこない。
人名も出てこない。唯一出てくる名前からも判別できない。
時代も大正時代とか昭和初期かな?と思いながら読んでいたのだが、
プロジェクションマッピングという言葉が出てきてそれも打ち崩される。
最後のほうに語り部の男が列車事故で瀕死の状態らしいことも書いてあるので
病院で死ぬか生きるかの状態で浮かんでいる映像だったのか?
とも思うがまったく確証がないままに終わってしまう。
いや、終わったのか?
とにかく何もかも曖昧模糊とし、
今回もやはり山尾悠子の世界はいつまでも理解できないまま、
なのにあまり残念に思えないどころか、
また読みたいと思わせるのだから面白いものだ。