吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

一瞬の夏 --沢木耕太郎

ニュージャナリズムという言葉をすっかり聞かなくなったが、今はなんと言うのだろうか。

乱暴な定義だが、ノンフィクションという分野は事実を客観的に、多角的な視点で調査し、
インタビューしながら作り上げるものだが、
「クレイになれなかった男」(「敗れざる者たち」)』から始まり、
「一瞬の夏」での沢木はいかにカシアス内藤と密接に係わりあいながら、
自分も苦しみながら、それでいて客観的に、カシアス内藤を見守っていこうとするスタイルをとる。
どこまで対象者の人生に係わっていいのだろうかという葛藤と、
共に見る夢に対する情熱とが包み隠さず表現される。
才能があるのにやさしすぎる性格によって何度も繰り返される挫折と希望の往復に
自分のことのように一喜一憂したのを覚えている。

20年以上も前に読んだ本なのに、たまに「カシアス内藤」の名前が浮かぶことがある。
今はどうしているのだろう・・・ と。

ところが、「カシアス」という続編ともいうべき写真集を、沢木らと2005年に出していたのを
今日知った。沢木の本を読まなくなって長い年月が経っているので、気が付かなかった。
良かった。自分のジムまで持っているなんて。
まだまだ彼らのストーリーは終わっていなかったんだ。
知ったからには今からでも写真集を買わないと、気になって自分のなかで完結しそうにない。
というか、完結させてはいけないか。まだまだ続けなきゃね。