吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

包帯クラブ --天童荒太

タイミング的には、映画の公開に合わせているような感じになってしまうので
後回しにしようかと思ったけど自分の決めた順番に
できるだけ合わせたいので仕方ないか。

私が重松清の「くちぶえ番長」の項で書いた文章を引用します。

>子供には子供の世界があるのは当然で、それは子供にしかわからない。
>かつて子供だったはずの大人にも、もうわからない。
>だから子供たちは自分ではどうすることもできない環境の変化の中で、
>様々な問題を自分たちの手で、自分たちで考えながら解決していくしかない。

でも、解決できないで傷つくこともあります。
それはそれで大事なことですけど、そのままグジグジしていても
傷はなかなか癒えません。
そんな時に「包帯クラブ」の登場です。
さいころは「くちぶえ」で解決することも、少し大人になると
別の方法が必要になります。
時間に身を任すのか、何かに打ち込むことで解消するか、友達に話して気を紛らわすか、
色々考えられるなかで、「包帯」。
素直に面白かったです。

天童荒太はこれしか読んでいません。
「家族狩り」「永遠の仔」の評価が高いこともわかっています。
何度か手に取ったのですが、エネルギーがいりそうなので先延ばしにしています。
ここ数年、シリアスで重いテーマの本を避け気味です。
この作品は発売と同時に、即買い、即読しました。

ファンの方は重厚な感じの作品じゃないと読んだ気がしないのかもしれません。
子供向けだと思って読んでいない人もいるかもしれません。
でもひらがなが多く、読み易いこの作品は、天童荒太の実力をとても感じるものでした。
偉そうに書いてスイマセン。

会社の提出書類やプレゼン資料でも、難しく書くのは割と「簡単」です。
でも、簡単な言葉や表現で誰にでもわかりやすく書く、というのは
相当な実力がなければできません。
いずれ書きますが、私の大好きな「星新一」の作品を読んだ人なら
ご理解いただけるのではないでしょうか。
知識、見識を備え、真の実力を持たないと、読み易く、奥深い
作品は作れないと思います。

もう少しエネルギーを貯めてから「家族狩り」や「永遠の仔」は読みますが、
その時にどう感じるか愉しみです。

ただ、あの表紙はどうなんでしょう。映画出演者の写真。
出演者が悪いというのではありません。
私は出版されてすぐ買ったので、シンプルな表紙でしたが、
あの表紙だと「子供向け」すぎて、手に取りにくいとか、
電車のなかで少し恥ずかしい思いをしてしまいそうです。
中高生だけに読ませておくのは勿体ないでしょ。
「包帯」が必要な大人だってたくさんいるのですから。