吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

ボッコちゃん --星新一

星新一の発想力は並大抵なものではない。
登場人物の特徴や情報を徹底的にシンプルにすることで今でも古さを感じさせない。
そして、現在の社会にそのままあてはまる風刺、ブラックユーモアが満載である。

星新一の自選短編集の「ボッコちゃん」はその中でもダントツに面白い。
ショートショートが50編収められていて、どれも素晴らしいけど、
その中で一番好きなのが「おーい でてこーい」です。
知ってる人はいっぱいいることでしょう。

ひょんなことから見つかった穴をある業者が買い取り、そこにあらゆるゴミを捨て始める。
いくら捨てても穴が埋まることはなく、原子力廃棄物から機密書類まで・・・・。
捨てる場所があるため、人々は生産に励み、発展していくが・・・

初めて読んだとき、皮肉な結末にびっくりした。
その後、参考書でこの作品に出会った。やっぱりすごいと感じた。
TVで「世にも奇妙な物語」の中ではこれを映像化していた。
いかりや長介が出ていたのを覚えているが、忠実に作られていて面白かった。
そして久しぶりに今読み返してみた。
1960年代に書かれた作品の結果は現実になっている。
それを、たった6ページに簡潔に収めていることに改めて驚いた。

それ以外にも「生活維持省」、「おみやげ」、表題の「ボッコちゃん」、「親善キッス」など、
取り上げるとキリがない。
クスッと笑える反面、その裏にある星新一が発する警鐘が見え隠れする。

40-50冊あるが、今後時間をかけて再読しようと思う。
1001話あるうちどれくらい読んでいるのか、調べるのにもいい機会かもしれない。