ひねくれアイテム --江坂遊

ひそかに応援している作家、江坂遊さんの2冊目です。
数少ないショートショートの作家さんで星新一さんの唯一の弟子なんです。
48篇収められているのですが、前作の「仕掛け花火」程のインパクトはありませんでした。
と、言うよりも「仕掛け花火」のインパクトが強すぎたのかもしれませんが（笑）
ほぼ会話だけで構成されている作品などは相変わらず多いのですが、
民謡っぽい雰囲気はだいぶ減っていてその分、作品の幅も広がったような気がします。

星新一さんにはない江坂さん独特の雰囲気とオチは読み手によって好き嫌いが分かれるかもしれませんが
オヤジギャグのようなオチとか、茶目っ気のあるオチとか、ブラックだったり、
いい話だなあとしみじみしてしまう話しなどバリエーションの多さはなかなかのものです。

ビックリするような派手なオチはあまり期待できませんが、意表をつく作品は数多いと思います。
自分でも思いつくオチはあるのですが、それよりも会話や展開の巧みさに感心させられます。
ナンだこりゃ？っていう作品もいくつかあるのですが（笑）ショートショートという
制約のある世界で勝負しているわけですから多少のお遊び、
もしくは実験？程度に考えるようにしています。
むしろ江坂さんの潔さのほうが勝っているのか、好感度はかなりいいです。
あっという間に読めてしまうのですが、ギリギリまでそぎ落とした文章は、むしろゆっくりと味わえました。

特に印象に残った作品は「チクッ」「味わいトマト」「抽斗の中身」「とっかえべえ」でしょうか。
「チクッ」は茶目っ気のある作品でショートショートの王道っぽい感じ。
「抽斗の中身」は星新一テイストを感じました。
「味わいトマト」は、なんだそりゃって感じの悪戯っぽい作品。
「とっかえべえ」はしみじみとした作品です。
ショートショートなので作品の概要を書くと面白さが半減するので書きませんが、
「とっかえべえ」が一番好きな作品でした。

最近、もう一冊出たようで、嬉しいです。星新一の後継者としてこれからも頑張ってほしいなあ。

次は「鍵穴ラビリンス」読まなきゃ！