吉祥読本

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聖の青春 --大崎善生

子供の頃から重い病気を抱え、命懸けで将棋の世界で名人を目指しながら
29才で亡くなった村山聖(さとし)という人の話です。


将棋の知識はないのですが、村山聖の凄さは伝わってきました。
また、彼らを取り巻く人たちの村山聖に対する愛情、思いやり、
そして村山聖自身の彼らに対する優しさも十二分に伝わってきました。

子供の頃から死と向き合うということはどのようなものなのだろう・・・想像を絶する。

一方、家族みんながそれぞれの立場で聖の病気は自分のせいだと苦しんでいる姿も同様に痛々しく、これも想像を絶する。
特に冒頭、まむしの逸話があるが、お兄さんの聖に対する思いはつらい。


本書でとても大事な要素として、師匠の森信雄との親子のような兄弟のような交流がある。
微笑ましく、とてもうらやましい。
この師匠がいなければきっと聖は世に出ることは無かったのではないだろうか。
二人のつながりの深さには思わず泣かされる。
人の出会いというのは不思議でコントロールできないものだが、
これも聖が呼び込んだ必然なのかもしれない。


「生きているものを切るのはかわいそうじゃ」と言って、髪を切ろうとしない聖の言動は、
聖の生への考え方をとても良く表している。
と同時に、将棋に対する執念は同じ人間だろうか、と思わせるぐらい凄みがある。

次世代を背負うライバルであり目標だった谷川、羽生との対決の熱気は
将棋を知らなくても伝わってきた。
もともと天才的に強かったライバルたちも、村山がいたからこそ、より強くなれたんじゃないかな。
病気がきっかけだったとはいえ、名人になるために命を削る精神力、真摯な姿は心に響く。


私事ですが、20代前半に3ヵ月半ほど入院したことがあります。
初めて命のことを考えた。すご~く考えた。
発病から落ち着くまでトータルで約一年くらいだったかな。
そんなレベルでも大変なことだらけで結構辛かったのですが、本書を読むと恥ずかしくなります。
俺の悩みなど、比べ物になりませんでした。
改めてちゃんと生きなきゃな、と背筋が伸びる思いにさせられました。


何だか、書きたいことは沢山あるんですけど、うまくまとまりません。
本書の感想を駄文で汚すのは忍びないので、このへんで。
十分汚してるか・・・


著者の村山に対する愛情がヒシヒシと伝わってくる、とてもいい本でした。