吉祥読本

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四畳半神話大系 --森見登美彦

最初から最後まで大笑いではなくニヤニヤしてしまう顔を周囲には悟られないよう、
ぐっと強張った顔で読み通したので、疲れました。

 

「BOOK」データベースより引用
大学三回生の春までの二年間を思い返してみて、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。
―『太陽の塔』(第十五回日本ファンタジーノベル大賞受賞作)から一年。無意味で楽しい毎日じゃないですか。
何が不満なんです?再びトンチキな大学生の妄想が京都の街を駆け巡る。



「太陽の塔」 の匂いがさめないうちに飛び込んだ
四畳半の世界をタップリ堪能して、かろうじて戻る事ができました。
舞台は京都、そして主役は大学生。
今回もやはり濃いキャラ、重層感タップリの妄想が一杯でした。

 

4話で構成されているが、2話目で「おや?」と思い、3話めで、ああそういうことね。と理解した。
「薔薇色で有意義なキャンパス」を望む主人公が、友人?小津により、
むしろ真逆のキャンパスライフに引きずり込まれていく。
映画サークル「みそぎ」、「弟子」、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関「福猫飯店」。。。
4つの選択肢を選ぶことでどのようなキャンパスライフが送ることができるのか、が描かれ
そしてそれらの話しの中にあるちょっとしたリンクが潜んでいる。
最終的にはどの話しも似たり寄ったりの結末だが、どのような変化があったかは楽しめた。
あ、最後は逆転してたね。

 

楽しめたが、一回受け入れたキャラ設定が次の話しではそのイメージが邪魔になる。
あれ、こんなやつだっけ?と思って一旦流れが止められたように感じたのが残念。
キャラクターがこんな風に変わったんだね、という楽しみ方ができるのでいいのですが。
それと繰り返し引用が多用され、あれ?っと思いながら実は何かがちょっとずつ違うだろうと
キッチリ読み込んだつもりだが同じ文章にしか見えなかった。
まあ、展開を考えれば必要な演出だったのかもしれない。

 

しかし、独特の文体、比喩表現はいちいちツボに来て楽しめた。
それに設定、構成も良くできていると思う。
パラレルワールドなんだな、と途中から思いながら読んでいたが最後の話は更に立体感を伴っていて
最強の妄想ワールド炸裂だった。映画「CUBE」を思い浮かべた。
大きなお世話だが、どうやって締めるんだ?と心配したくらいだ。



それにしても、小津は全篇通してすごい。ここまで黒い奴がいていいものか。
全ての世界を自由に行き来しているような特殊能力を持ち合わせているのだろうか。
次はどんな黒さを発揮してくれるのか、期待までしてしまった。
なんだかんだお互い揉めながらも迷コンビぶりが面白い。
「この、さびしがりやさん」
「きゃ」
は、何度読んでも可笑しい。

 

太陽の塔」を読んだ時とは違うインパクトだったが充分楽しめました。
(慣れたのか?慣れてしまったのか?)
次の準備をしないといけないですね。



それから「海底二万海里」を再読しようと去年から積んであるのですが、無性に読みたくなりました。
読む順位を上げたいと思います。