吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

わが愛しき娘たちよ --コニー・ウィリス

「BOOK」データベースより引用
寄宿舎惑星の女子寮、その男子禁制の聖域でなにが起こったのか?
性と生殖が切り離された未来のセクシュアリティを描破して、スキャンダルをまきおこした
超問題作「わが愛しき娘たちよ」。大空襲下のロンドンを訪問した時間旅行者の冒険を描いて
ヒューゴー、ネビュラ両賞を受賞した傑作「見張り」。
アメリカSF界きっての人気女性作家が幅ひろい作風で、優しく怜悧に、
そして過激に読者の知性を挑発する話題爆発の作品集。



各作品の冒頭には作品に関連した、作者自身の簡単なメモが書いてあります。
これを作品を読み終えた後に再読すると、違う味が出てきます。(そんな気がします)
では、手短に。

 

「見張り」 (ヒューゴーネビュラ賞受賞)
 「犬は勘定にいれません」より前に出版された姉妹作品「ドゥームズデイ・ブック」は後回しにして
 (長編を避けたって事ですが。。。)入手しておいたのですが、この作品も「犬は勘定にいれません」
 と登場人物がかぶるタイムトラベルものでした。。。三姉妹だったのね(涙)
 ただ、年代的にはこの作品が一番最初だからむしろこれが先でいいってことですね。
 三女から読んでしまった。。。
 物語は研修で戦時下のセントポールズ大聖堂にタイムトラベルしてきた主人公が大聖堂消失を
 阻止しようとします。短編だと読みやすく、楽しめました。

 

「埋葬式」 
 主人公アンの不倫相手のエリオットが死に、葬儀が営まれるがそこに死んだはずのエリオットが現れます。
 アンの驚愕、心の振幅、そして自身の葬儀に現れたエリオットの謎が描かれます。
 オチはだいたい予測できたのですが。

 

「失われ、見いだされしもの」 
 世界の破滅をテーマにした作品なんですが、キリスト教徒だったら理解しやすいのかな?
 読んでいてなぜかエクソシストのテーマ曲が頭の中に流れたけど、ホラーではない。

 

「わが愛しき娘たちよ」  
 出版当時にかなり物議をかもしたようですが、今ならまだしも時代を考えれば当然か。
 虐待や性の問題などがでてきますからね。
 男性にとっても女性にとっても後味が悪いかもしれないが、これをどう読むか。。。
 個人的には普通に読んでしまいました。

 

「花嫁の父」
 ねむり姫のその後、を描いている。ねむり姫と共に目覚めた父の憂鬱を描く作品。

 

「クリアリー家からの手紙」 (ネピュラ賞受賞)
 読み終わって「?」と思ってしまったので、読み直しました。
 「パラノイアが死因ナンバーワン」かあ。。。。なるほどねえ。じんわり効いてくる感じです。

 

「遠路はるばる」
 皆既日食を見るために遠くからモンタナに集る人々。娘のレイニーを連れているメグは、
 4人の科学者らしきメンバーに気がつく。

 

「鏡の中のシドン」
 他人の癖や思考をゆっくりと写し取ることができる「ミラー」と呼ばれる存在の私、通称「ルビー」。
 しかし自分の自由意志では誰をコピーするかコントロールできない。
 ルビーが誰を写し取っているのか、、、読んでいて混乱した作品。これもゆっくり読み直した。
 
「デイジー、日だまりの中で」
 「太陽がもうすぐノヴァになる。」・・・太陽が徐々に膨張して地球が飲み込まれてしまうかも。。。
 そんな話しだけどその前にニュートリノが心配になりました。

 

「通販クローン」 
 クローンを作ってくれる通販会社に頼んだ自分のクローンがやってきた。
 しかし、クローンのクセにちっとも似ていない。。。。とぼけた結末は結構好きです。

 

サマリア人(びと)」
 ある日ホイト師のもとにナタリーが、オランウータンのエサウを連れてきた。
 エサウに洗礼を受けさせて欲しいと。手話で人間と会話ができ、信心深いというが。。。
 宗教に対して知識が無いので深いところは理解出来ていないかもしれないけど、
 宗教に対する問題提起になっているのでしょうか。

 

「月がとっても青いから」
 廃棄物である炭化水素性化合物をオゾン層再生に利用しようとする研究者の顛末。
 気持ちはわかるけど、崩した口語体は文字で読むと頭に入ってこないなあ。



SFだけどSF臭さはない、そんな印象を受ける作品が多かったです。
長編同様、軽く読み飛ばせない作品群でした。
慎重に読まないと気付かない伏線が何気な~く潜んでいるんですよね~。
これで「最後のウィネベーゴ」に気兼ねなく進めるぞ、と言いたいところですが
「見張り」を読んだおかげでやはり「ドゥームズデイ・ブック」を先に読もうかと迷っています。
なんせ長編だからなあと躊躇しているのでございます。。。