吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

果つる底なき --池井戸潤

「BOOK」データベースより引用
「これは貸しだからな」。謎の言葉を残して、債権回収担当の銀行員・坂本が死んだ。死因はアレルギー性ショック。彼の妻・曜子は、かつて伊木の恋人だった…。坂本のため、曜子のため、そして何かを失いかけている自分のため、伊木はただ一人、銀行の暗闇に立ち向かう!第四四回江戸川乱歩賞受賞作。


池井戸さんの作品を読むのも三作目。いよいよデビュー作を読みました。
他に読んだ作品と同様銀行モノであり、共通してタフな主人公の伊木、嫌な上司、気持ちの通じる同僚、そして謎の黒幕など、登場人物の構成は基本的に似ています。というか、既にデビュー作にして池井戸さんは自分のスタイルをほぼ確立していたようです。
銀行内部の情報は相変わらず多いのですが、わからなくても気にせずスラスラ読ませてしまう力は流石です。

 

今回の主人公、伊木はハードボイル度数が高く、全体的に力が入っている感じがします。
殺人事件が多く、そのあたりもデビュー作だからこその過激さでしょう。
前半、坂本の妻であり、伊木の元恋人だった曜子が意味ありげに出てきますが、
それっきり後半は出てこなかったため、設定としては無駄だった気がするし、
若い恋人との関係もぎこちなく、もう少しスッキリして欲しかったのですけど
男女間の関係はこの際二の次でいいのでしょう(笑)
最後に活躍する猫に関してはちょっと池井戸さんらしからぬ展開な気もしますが、微笑ましい?ので良しとしましょう。(笑)

 

空飛ぶタイヤ」に比べると力みを感じますがそれは仕方ありません。
それよりも、力のある作家さんはデビュー作からやはり力量が透けて見えるんだなあと再認識しました。
ここのところ立て続けに各作家さんのデビュー作品を読んでいますが、
それぞれ作家さんのその後のエッセンスを感じることができて、荒削りな美味しさがあります。洗練された味もいいのですが、いい素材は野性味や苦味など色んな味わい方ができるというものです。
酒の肴の話しみたいだな(笑)
これからも、これは!と思う作家さんのデビュー作品をたくさん読もうと改めて思いました。


ちなみに池井戸さんの作品をもう2冊、仕入れてしまいました~(笑)楽しみです!