吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

アンドロイドは電気羊の夢を見るか --フィリップ・K・ディック

本作は遠い昔(多分、十代だと)読んだきりで、再読用に数年前から積んでおいたものです。これを原作に制作された映画「ブレードランナー」は好きな作品でしたが、原作とのつながりは感じられない別物でした。
昔読んだ時の印象は、「地球に紛れ込んだ、人間と区別がつかないアンドロイドと闘う」という単純な図式の記憶程度でした。
その点では映画に近い印象なのですが、なぜか映画を観たとき違和感があったことは覚えています。
で、今回改めて読んでみて思いました。
「深みのある大人の作品だったんだなあ」
しみじみしてしまいました。

 

ガチャガチャしない抑えた文体で、人間とアンドロイドの違いがどれほどのものかを考えさせるその過程には誰が人間で、誰がアンドロイドかという不安とは別に、
人間だから偉いのか?
アンドロイドに宿ってしまった人間性は、人間の持つアンドロイド性と同じなのではないか?
両者を分ける境界線はどこにあるのか?
など、ついつい考察してしまう。

 

過去の自分を振り返ると、何かの拍子に記憶が再配置されて違う記憶として残っているのではないか?と思うことが時々ある。
もしそれが頻繁に起きているのであれば、本作で出てくる「記憶を操作されているかもしれないアンドロイド」や「仮想世界で感情を操作する人間」と、何ら変わらない状況なのではないか?と不安になる。

 

こんな事書くと、お前の記憶は適当なんだな?と思われそうですが重大な不整合はないと思います。
きっと。
・・・多分。
・・・・・まあ、話し半分で聞いていただければ、私の気持ちも軽くなります(笑)
こんな事言ってると、「アンドロイド狩り」がテストしに現れそうです。

 

哲学的だったり、家族愛だったり、色々なテーマをSFという衣に包み込んだストーリーは実はSFというジャンルを越え、そして時代を超えた名作だったということが、よ~くわかりました。
自分同様、十代に読んだきりという人がいたら騙されたと思って聞いてください。
「今こそ再読すべきですよ」