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2010年宇宙の旅 --アーサー・C・クラーク

2010年、宇宙船アレクセイ・レオーノフ号は地球を旅立とうとしていた。
10年前に遥か木星系で宇宙飛行士4人が死亡、1人が失踪した事件を調査し、
遺棄された宇宙船ディスカバリー号を回収することがその任務だった。
はたして真相は究明されるのか?そして、木星軌道にいまも浮かぶ謎の物体モノリスの目的とは…
前作を上回る壮大なスケールで全世界に興奮を巻き起こした傑作にあらたな序文・あとがきを付した新版。
(「BOOK」データベースより引用)

 

昨年出発した(笑)宇宙の旅の続きです。
今回はソビエトの宇宙船に乗り込んだフロイド博士が木星へ向けて出発し、
前作で行方不明になったボーマン船長、そして宇宙を漂っているディスカバリー号
というかHAL9000のその後の状況や、事件の真相究明がなされている。
2001年を超えることはないだろうと思っていましたが、ある意味2001年よりも楽しめました。
HALの暴走に関しては割とあっさりと解説されているので、拍子抜けした感もありますが、まあ納得。
ボーマン船長の顛末に関しても、下手に書いたら心霊現象のようになってしまいそうなところ
不自然ではなく、ナルホドそうなるのねと素直に納得できた。
また、まるで木星を探索して来たのかもしれない、と思わせる細かい描写や技術的な知識量は
相変わらず圧倒的であり、よっ!クラーク!と叫びたいくらいである。

 

前作と違うのは男女混合の乗組員に、恋愛パートが絡んでくるところ。
個人的には無くてもいいように思う反面、危機的状況を共有した男女に恋愛感情が湧く、
というのはよく聞く話しでもあるので人間としてはリアリティがあるとも言える。かな。
地球上のボーマンの家族のことも描かれていることを考えると、人間ドラマを付け加えたかった
ということでしょうか。

 

この作品の映画版は観たのですが、2001年~と比べるとどうしてもインパクトが小さく印象が薄い。
正直、観ていた記憶がなかったくらいだが、読んでいてやけに鮮明な映像が何箇所も浮かんできて
そういえば観たな、と思い出したくらいだ。
ただ、その映像が浮かんだことは想像力が足りない頭にとても良い助けとなってくれ、観ていてよかった~
原作に忠実な映画だったのかな?

 

2001年~と違ってキューブリックに邪魔されることも無く(笑)、前作よりも落ち着いて成熟度を増し、
想像力をより刺激してくれる良作だと思います。

 

ボーマン船長は言います。
「あとで説明するよ、ハル。時間はたっぷりあるんだ」

 

解明されていないことがまだまだあり、果たして今後、どのような説明をしてくれるのでしょうか。
楽しみな旅が続きます。