吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

TAP ::グレッグ・イーガン

先に「祈りの海」を読もうと思っていながらなかなか手が伸びず先に奇想コレクションから手を付けました。

 

色んな分野が網羅されているのでグレッグ・イーガンの作風を絞り込む事は難しいですが短絡的に判断するとハードSFを得意とすると思われます。
ただホラー的作品も面白いし、意外と神秘的な展開も巧さを感じたので絞り込むのは早計か。

 

バイオテクノロジーやプログラミングなどの専門用語が多く、この用語たちに嫌気がさす人も多いかもしれません。
そのあたりは変に理解しようとするよりも雰囲気で流してしまってもいいと思います。
むしろその方が理解しやすいかも。だって脳科学なんて普通の人が理解できないでしょ?
先進技術がもたらす恩恵を選ぶか、それにより既存の倫理観を捨てる事を選ぶか、
そのあたりの近未来的なようでやけに現実的な問題を描いていることがわかれば
専門的知識などなくても問題ないのです。乱暴かな?(苦笑)

 

「新・口笛テスト」は一番理解しやすく一番身近でしたが、今後起こり得そうで怖いです。
「ユージーン」と「銀炎」が結構好きな作品です。
「ユージーン」は極端に遺伝子に拘るとどうなるかが提示され、これも今後必ず起きるだろうなあと不安が。
でもラストはニヤリとしてしまいます。
表題作「TAP」はチップを脳に埋め込んで通常とは違う言語世界を構築できる時代を描いているが将来的にはこんな時代が来るのかも。。。と思うと人間の存在意義って何だ?と考えてしまう。。。
う~ん結構リアリティのある未来像を見せられている気がします。

 

全体的には分野が絞れていないが、不思議とこれは苦手だなと思う作品がありませんでした。
理解出来ていないものも多少あるにせよ、そうであっても視点の妙みたいなものが味わえたので読んで損したという作品はありませんでした。



以下、作品リスト

 

「新・口笛テスト」 「視覚」 「ユージーン」 「悪魔の移住」 「散骨」
「銀炎」 「自警団」 「要塞」 「森の奥」 「TAP」