吉祥読本

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仕掛け花火 --江坂遊

正直なところ不覚にも最相葉月の著書「星新一 一〇〇一話をつくった人」を読むまで
名前すら知りませんでした。

以下、Wikiより引用
>星新一の唯一の弟子であり、長女の星子(せいこ)、長男の新(あらた)は彼の名前から取られている。


星新一に弟子がいたなんて。
丁度この本が復刻版として出たので購入してあったのですが、ついに読み終わりました。
ショートショート39編。
独特の雰囲気で正直なところ、最初戸惑いました。
途中から慣れて、素直に楽しめるようになりました。
色々なタイプの作品が並んでいるのですが、民話調とでも言うのでしょうか、
独特の口調でずっと話しかけられている感じ。
星新一のような作品もあるけど同じタイプではなく、阿刀田高っぽい作品もあるのですが、
やはり何かが違います。

ショートショートのわりにスピードを出して読めませんでした。
数ページの作品なのにじっくりと読まないと頭に入ってこないというか、引き止められてしまいます。
漫画ですが松本大洋の一連の作品を斜め読みできないのと同じ感覚でした。

作品の終わり方も、独特で驚くものが多かったです。
オチがわかるものもあるのですが「そこかよっ!」と、言いたくなるような、
少しだけスカされる締め方とでも言うのでしょうか。
その件に関しては巻末にある星新一最相葉月の解説で、
「なるほど、そういうことか」と合点のいくことが書いてありました。
関西、落語がキーワードかな。


この本に収められている「児童販売機」という作品は個人的には星新一っぽい作品だと思いましたし、
オチも「そこかよっ!」で、とても面白かったので好きな作品です。
登場するその二人の子供の名前は星新一からとったものに違いない、と思っていたのですが、
「星子」「新」という名前なんです。

江坂さんご自身のお子さんの名前でもあったなんて・・・

子供が先か、作品が先かはわかりませんが、マッタク江坂遊さんのオチは、手が込んでいる・・・
「仕掛け花火」という書名は、よくできてますね。


実はご自分では「作家」としては名乗っていないらしい。
その理由はここには書きませんが、こういうタイプの人、嫌いじゃない。

来年、もう一冊出されるらしいので、「要注意人物」として楽しみです。