吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

読書記録

趙雲伝

著者:塚本靑史 出版社:河出書房新社 三国志をあまり知らない人でも趙雲の名はそこそこ有名だと思うが、 そんな人物を今題材にするということは、 それなりの切り口で成程そんな解釈があるのか、 な~んて唸りたいと思っていたのだが 特に目新しい展開は無…

幻の女 ―ミステリ短篇傑作選

著者:田中小実昌編集:日下三蔵出版社:筑摩書房 日下三蔵さんの名前で食指が動いた。 昭和感漂うというか、ド直球に戦後直後の空気感しかない作品ばかり。 新宿界隈の混沌とした雰囲気はまあわかる部分もあるが 聞いたことが無いスラングは読んでいるほう…

童の神

著者:今村翔吾出版社:角川春樹事務所 う~む。またまた面白い。 今村翔吾作品としては4冊目。平安時代の京都が舞台。 平安時代は苦手意識があるので今のところハズレが無い今村作品といえど 不安があったが、杞憂に終わりました。 京人に蔑まれ、山に暮ら…

信長、鉄砲で君臨する

著者:門井慶喜出版社:祥伝社 題名から期待していたが、織田信長よりも伝来した鉄砲に重心が置かれている。 伝来後、鉄砲がどのような位置を占め、どのような扱いだったか、 どのように時代を変えていったかが分かり易く描かれる。 そこに信長の有名なエピ…

辻政信の真実 失踪60年--伝説の作戦参謀の謎を追う

著者:前田啓介 出版社: 小学館 戦中の参謀として有名だが、評価が様々なのではっきりとした人物像をよく知らないため、厚めな新書を書店で見かけ、ちょうどいいかもと思い読んでみた。 炭焼きを生業とする家で生まれ、あまり恵まれた環境ではなかったもの…

だれかさんの悪夢

著者:星新一出版社:新潮社 今更ながらと言う勿れ。 「星新一の思想」を読んでから星新一を読みたくて 手近にあった作品の中から選んで再読。 oldstylenewtype.hatenablog.com 懐かしい思いと共に、とにかく短時間で読めるので嬉しい。 あまりにあっさりと…

とうもろこし倉の幽霊

著者:R・A・ラファティ編集/翻訳:井上央出版社:早川書房 昨年出た「町かどの穴」、「ファニーフィンガーズ」はほぼ再読だったが 本作はついに全9篇、初邦訳とのことで期待が高まる。 表題作を含め、様々な奇想が繰り出される。 読み易く感じる作品が多い…

イントゥ・ザ・プラネット

著者:ジル・ハイナース翻訳:村井理子 出版社:新潮社 洞窟探検家、写真家など様々な顔を持つ水中探検家としては 先駆的女性ダイバー、ジル・ハイナースのの自伝。 綺麗な海で魚たちと戯れながら大自然を楽しむダイビング、 人間の限界を超える深海に挑むダ…

イカはしゃべるし、空も飛ぶ 〈新装版〉

著者:奥谷喬司出版社:講談社 これだよこれ。こんなイカ本が読みたかった。 もっと早く読みたかったなあ。 「イカ4億年の生存戦略」と重複する情報もあるにはあるが、 明らかに知りたい情報、知らなかった多くの情報はここにあった。 1989年9月初版で、新装…

伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触

出版社 ‏ : 早川書房 「最初の接触」 マレイ・ラインスター「生存者」 ジョン・ウインダム「コモン・タイム」 ジェイムズ・ブリッシュ「キャプテンの娘」 フィリップ・ホセ・ファーマー「宇宙病院」 ジェイムズ・ホワイト「楽園への切符」 デーモン・ナイト…

イカ4億年の生存戦略

著者:ダナ・スターフ監修:和仁良二翻訳:日向やよい 出版社:‏エクスナレッジ 他のイカ本を読もうと思っていたら、本書が目についたので先に借りました。 頭足類の歴史を知るにはいいのですが、期待していたイカに関する話が少なくて アンモナイトとかオウ…

小説の惑星 オーシャンラズベリー篇

編集:伊坂幸太郎出版社:筑摩書房 永井龍男: 「電報」絲山秋子: 「恋愛雑用論」阿部和重: 「Geronimo-E, KIA」中島敦: 「悟浄歎異」島村洋子: 「KISS」横光利一: 「蠅」筒井康隆: 「最後の伝令」島田荘司: 「大根奇聞」大江健三郎: 「人間の羊」 …

同志少女よ、敵を撃て

著者:逢坂冬馬出版社:早川書房 アガサ・クリスティー賞は初めて読んだが、賞の名称と本作の内容の印象がだいぶ違った。 冒頭で、大木毅さんの「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」からの引用があり、題名から受けていた印象よりも硬派な作品かも、と思わせる。その後…

小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇

編集:伊坂幸太郎 出版社:筑摩書房 「小説の凄さ」を知りたいけれど、一体何から読めばいいのかわからない人を対象に伊坂幸太郎が好きな短編を集めたアンソロジー。とのことで読んでみた。 著者と作品は下記の通り。 眉村卓: 「賭けの天才」井伏鱒二: 「…

塞王の盾

著者:今村翔吾出版社:集英社 高い抑止力(石垣)で戦うことを諦めさせるか、圧倒的攻撃力(鉄砲)で戦いを 終わらせるか。 大津城を主舞台に、共に戦のない世を目指す職人たちの矜持と矛盾を描くストーリーは 最初から最後まで飽きさせない。 戦の最中にも…

星新一の思想

著者:浅羽 通明 出版社:筑摩書房 最相葉月「星新一 一〇〇一話をつくった人」とは違い、 あくまで作品を解析することで星新一を語るというアプローチで 最相作品と双璧を為す力作でした。 現代の技術的、社会的状況と作品の先見性を結び付ける点に関しては…

理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

著者:吉川浩満出版社: 筑摩書房 書店で見かけた時にすかさず買ったが、思っていたような内容ではなく やたら時間がかかってしまった。 最初こそ面白く読んでいたが、徐々に哲学書を読んでいるような気になってきて 事実本書のキモは素人の進化論に対する誤…

町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1

著者:R・A・ ラファティ 翻訳:伊藤典夫/浅倉久志監修:牧眞司 おお、ラファティの作品が!と早速飛びついた。 「九百人のお祖母さん」「つぎの岩につづく」「どろぼう熊の惑星」など、 既読作品からの収録が多いことに気付いてちょっと萎えたが、 勿論初…

八本目の槍

著者:今村翔吾出版社:新潮社 「じんかん」が面白かったので少し遡って本作を読んだが、本作も面白い作品だった。 秀吉の小姓として集められた様々な個性を持ち、のちに七本槍と呼ばれた若者たちの 青春物語であり、それぞれの苦さを伴う人生が分かり易く描…

地球にちりばめられて

著者:多和田葉子出版社:講談社 以前から気になっていた作家さんで、ようやく初読。 留学中に祖国が失われてしまったhirukoは、様々な国の人たちと出会いながら 母国語を話す人を探して旅する。 多言語が飛び交い、かつLGBTQや人種問題などを織り交ぜ、 テ…

インヴィンシブル (スタニスワフ・レム・コレクション)

著者:スタニスワフ・レム翻訳: 関口時正 出版社:国書刊行会 「砂漠の惑星」の新訳。 消息を絶ったコンドル号を捜索するため、琴座の惑星レギスIIIに インヴィンシブル号は降り立つ。 調査を進めた結果、コンドル号は見つかったものの乗員たちは 変わり果…

ペッパーズ・ゴースト

著者:伊坂幸太郎出版社:朝日新聞出版 本書には初回限定ポストカードがおまけとしてあって、 「興味のあることや好きなもの、心配なことや怖いことを詰め込んだところ、 今までの自分の小説の特徴が集まったような物語になりました。」 と書いてある。 そし…

地中の星

著者:門井慶喜出版社:新潮社 日本で最初となる地下鉄構築事業を構想、建設した早川徳次と 現場で建設に携わった6人の職人たちを中心に描く小説。 資金も無く、情熱と努力で困難な道を切り開いていくストーリーは小気味いい。 人脈を掘り起こし、最大限に生…

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2

ブレイディみかこ出版社:新潮社 前作程のインパクトは無かったが、一つ一つの話しはやはり考えさせる内容。 子供や著者や相方の考え方の微妙な違いが浮き彫りになる。 言葉的には多様性流行りだが世代や人種や地域で違う価値観があることを それぞれが受け…

民王 シベリアの陰謀

著者:池井戸潤出版社:KADOKAWA まさか続編が出るとは思っていなかった。 池井戸作品の中では特異な作品だが、池井戸さんもたまに気分転換を 図りたいのかもしれないなと思っている。テキトーな憶測だが。 以前より池井戸さんには半沢シリーズや下町ロケッ…

飢渇の人 エドワード・ケアリー短篇集

著者:エドワード・ケアリー翻訳:古屋美登里 出版社: 東京創元社 翻訳者の古屋美登里さんの熱意から生まれた日本オリジナルの短編集。 古谷さんのイラストまで掲載されていて翻訳者冥利に尽きるでしょう。 このために書き下ろした作品やイラストなど、ケア…

良い戦略、悪い戦略

著者:リチャード・P・ルメルト翻訳: 村井章子出版社:日本経済新聞出版社 2012年に日本語版が出版のため最新情報ではないが、 内容は至ってシンプルなのでさほど古さは感じない。 言われてみれば当たり前の内容だが、案外実行し続けるのは難しい。 シンプ…

最悪の予感-パンデミックとの戦い

著者:マイケル・ルイス翻訳:中山宥出版社:早川書房 2000年初頭、科学研究コンテストで新型インフルエンザを課題とした親子、 ブッシュ政権でパンデミック対策のために召集された医師、 地方の保険衛生官が抱いた違和感など、個別のわずかな人たちがアメリ…

喰うか喰われるか 私の山口組体験

著者:溝口敦出版社:講談社 溝口さんの著書は何度か読もうかな、と思うことがありながら結局初読み。 山口組を長年観察してきただけあって、まるでアチラの世界の人か? と、思えるような不思議な関係性を淡々と描いている。 ご自身や息子さんが襲撃された…

夜想#山尾悠子

出版社: ステュディオ・パラボリカ 雑誌「夜想」の山尾悠子特集号。 読み応えたっぷり。 山尾悠子の作品は読んでいるものの、多分半分も理解できていないことは 認識している。 山尾悠子に思い入れのある人たちの評論や熱い感想を読むにつれ、 その認識が正…