吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

読書記録

蹴れ、彦五郎

著者:今村翔吾出版社:祥伝社 戦国時代のスター的な武将たちではなく、名前は知っていても あまりスポットが当たってこなかった人たちににフォーカスしている短編集。 どの話しも著者の描く人物は爽やかで慈悲深くそして自らの信念に従う様が心地よい。 今…

流浪地球

著者: 劉慈欣翻訳:大森望/古市雅子 出版社:KADOKAWA 爆発する太陽から逃れるために地球ごと太陽系から脱出しようとする 「流浪地球」を筆頭に、「三体」同様、スケールの大きな作品が多い。 ただ「三体」のスケール感に驚いたせいか、 それぞれ楽しめる…

危機の外交 岡本行夫自伝

著者:岡本行夫出版社:新潮社 テレビでたまにお見かけする程度で、人物や仕事のことは正直よく知らなかった。 コロナで亡くなってしまったが、本書を読み、もう少し活躍してほしい 人物だったと思う。 日本の外交は一体機能しているのだろうか? 常々危惧し…

怪虫ざんまい 昆虫学者は今日も挙動不審

著者:小松貴出版社:新潮社 かなりニッチな分野の昆虫に対する熱量が凄い。 いろいろな世界があるのだなあ。 井戸のポンプをひたすら漕いで忍耐勝負のプラナリアを探す姿は 想像するだけで奇妙で圧倒されそうだが、その執念には恐れ入る。 ただ、コロナで行…

骸骨:ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚

著者:ジェローム・K・ジェローム翻訳:中野善夫出版社:国書刊行会 「ボートの三人男」以外の作品を知らなかったし、意外な分野でもあり 好みの内容らしいし、これは読まねばと思ってから少し時間だ経ってしまった。 幻想、怪奇、ディストピア、ファンタジ…

嘘と聖典

著者:小川哲出版社:早川書房 著者初の短編集、6編。 父と子の関係にSF的要素である過去と現在を掛け合わせた内容が多かったが、 マジシャン、競走馬、音楽、歴史改変など舞台設定が独特。 タイムマシンとマジシャンの組み合わせが嵌った「魔術師」は家族と…

血を分けた子ども

著者:オクテイヴィア・E・バトラー翻訳:藤井光 出版社:河出書房新社 てっきり男性作家だと思って読んでいたら女性でした。SF短編7編とエッセイ2編。 詳しい状況説明がないためストーリーを理解するために少し戻りながら 繰り返して読みはじめたが、ぐんぐ…

ゲームの王国(上/下)

著者:小川哲出版社:早川書房 舞台はカンボジア。カンボジアといえばポル・ポトが浮かぶが、 ポル・ポトの隠し子と言われるソリアと田舎の村で育つ天才児ムイタックが主役。 虐殺を免れるためにどう生き残るか、緊張の連続で史実に かなり沿ったかたちで物…

新しい世界を生きるための14のSF

編集:伴名練出版社:早川書房 基本的に書籍化されていない新世代の作家を伴名練がセレクトしたアンソロジー。 ほぼ知らない名前ばかりだが、バラエティに富んでいて案外楽しめた。 また、各作品に関連するジャンルのおススメ作品を伴名練がピックアップして…

新編 夢の棲む街

著者:山尾悠子編集:今野裕一装幀:ミルキィ・イソベ + 安倍晴美人形・写真:中川多理発行:ステュディオ・パラボリカ 収録作品が3篇+後記、中川多理が人形を添え、川野芽生が解説し 薔薇色の装幀で箱入りのまさにアートと呼べるコラボ作品。 少し離れたと…

リセット

著者:五十嵐貴久出版社:幻冬舎 いつの間にか出ていた「リカ」シリーズも第7弾となりました。 リカの高校生の時の話しですが、相変わらず周辺の人間が次々と不審死を遂げます。 すっかり慣れてしまったのか、怖さはあまり有りません。 まわりに無視されても…

決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月

著者:秋場大輔出版社:文藝春秋 まるで池井戸潤の作品を読んでいるような錯覚を覚えるノンフィクションだった。 LIXILで起きていたことは日経関連の記事で概要を読んでいたくらいで 結局内部抗争でしょ?くらいの印象だったが、こんな熱い闘いが展開されて…

三体X 観想之宙

著者:宝樹(バオシュー)翻訳:大森望/光吉さくら/ワン・チャイ 出版社:早川書房 三体シリーズがあまりにも壮大な物語だったので謎が多いことは確かだが、 あの内容をかなり正確に把握できたうえ、短期間でよくもこれだけの解釈を創出し、 尚且つ読ませ…

ユートロニカのこちら側

著者:小川哲出版社:早川書房 「2010年代SF傑作選2」で読んだ「バック・イン・ザ・デイズ」 を 読んだことをきっかけにいよいよ読むことに決めた小川哲。 まずはデビュー作からということで本作を選ぶが、 この連作集の中に「バック・イン・ザ・デイズ」は…

2084年のSF

編集:日本SF作家クラブ 出版社:早川書房 「ポストコロナのSF」に続くアンソロジー。 オーウェルが描いた「1984年」の100年後の2084年をテーマにしている。 23作家のうち、ほぼ未読作家さんのなか、逢坂冬馬、高野史緒の名前があり、 何とかなるかと見切り…

まっとうな人生

著者:絲山秋子出版社:河出書房新社 精神病院からの脱出行を描いた前作『逃亡くそたわけ』から十数年が経ち、 花ちゃんとなごやんはあれからお互いに家族を持ち、偶然岡山で再会する。 前作から随分経過したが、方言を効果的に織り交ぜながらの会話は変わら…

高く翔べ-快商・紀伊國屋文左衛門

著者:吉川永青出版社:中央公論新社 名前は知っているようで実はよく知らない人物だったが、 Wikiにもあるように架空の人物説がある位、謎が多いようだ。 一代で豪商となり、店を閉じてしまった経緯を追うと 著者特有の爽やかさもあって、まさしく快商。 魅…

走る赤 -中国女性SF作家アンソロジー

出版社:中央公論新社 武甜静/編橋本輝幸/編大和実/編訳 女性作家14人によるアンソロジー。作家の性別はあまり気にならなかったが、 人口が多いとはいえ、中国の女性SF作家の豊富さは世界のどの国をも 凌駕しているのでは? それも大学で基礎をしっかり学…

映画を早送りで観る人たち-ファスト映画・ネタバレ-コンテンツ消費の現在形

著者:稲田豊史 出版社:光文社 題名通りの新書だが、考えてみたことのない内容だったので 勉強になったというか何と言うか。 ファスト映画サイトの存在は知っていたが興味が無かったので見たことすらない。 話題に遅れたくないのだろうくらいは予測できるが…

孤剣の涯て

著者:木下昌輝出版社:文藝春秋 過去のいくつかの作品から連なるような構成っぽいが 徳川家康に呪いをかけた犯人を捜しだすよう依頼された宮本武蔵のイメージが 「敵の名は、宮本武蔵」からガラリと変わってしまい戸惑う。 戦国の世が急速に終末に向かう中…

日本アニメ史-手塚治虫、宮崎駿、庵野秀明、新海誠らの100年

著者:津堅信之 出版社:中央公論新社 大正時代から現在に至る日本アニメの歴史が手軽に読める新書。 副題にあるように手塚治虫、宮崎駿、庵野秀明、新海誠など アニメ界にとって大きな影響を及ぼした人、及ぼしている人たちを取り上げ、 その役割の解説のみ…

すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集

著者:ルシア・ベルリン翻訳:岸本佐知子出版社:講談社 もともと前著「掃除婦のための手引き書」に収められなかった作品群が 今回の作品集となり、これで「掃除婦のための手引き書」は全てとの事。 前作同様、いずれも著者の経験が強く反映されている作品が…

新しい世界の資源地図-エネルギー・気候変動・国家の衝突

著者:ダニエル・ヤーギン翻訳:黒輪篤嗣 出版社:東洋経済新報社 現在、世界中で起きている様々な問題を知るには大いに役立つ内容だった。 昔から本質的には変わらないが、資源をいかに確保するか、 この一点だけで戦争や紛争や確執が生まれるのだと改めて…

マイクロスパイ・アンサンブル

著者:伊坂幸太郎出版社:幻冬舎 猪苗代湖の音楽フェス「オハラ☆ブレイク」で配布された冊子に掲載された 短編を書籍化した連作集。 「オハラ☆ブレイク」に関しては知りませんでした。 最初は、伏線だとしても何か腑に落ちないなあと思いながら読んでいたが …

なめらかな世界と、その敵

著者:伴名練 (はんな れん)出版社:早川書房 初読みの作家さんだが、読み終わった後に二つのことを実施した。 まずこれは傑作選なのか?と確認したこと。違ったけど。 次に「ひかりより速く、ゆるやかに」をざっと読み返したこと。 気になることがあった…

AI監獄ウイグル

著者:ジェフリー・ケイン翻訳:濱野大道出版社:新潮社 世界情勢に関するニュースはウクライナ一色となっているが、 ウイグル問題も今でも継続している大きな問題である。 本書を読むまでここまでのことが起きているとは知らなかった。 欧米が声を上げてい…

かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖

著者:宮内悠介出版社:幻冬舎 明治時代末期。 若き芸術家たちがセーヌ川に見立てた隅田川河畔の料理店「第一やまと」に集い、 芸術を語り合うべく「牧神(パン)の会」を定期開催する。 その会合で様々な事件の話をメンバーが推理するという形式。 著者が明か…

残月記

著者:小田雅久仁 出版社:双葉社 「増大派に告ぐ」、「本にだって雄と雌があります」は読んでいるが 本作を含めそれぞれ印象が違い、著者のイメージが掴めない。 それだけ引き出しが多い作家さんなのかな。 月をモチーフにした3篇のダークファンタジー。 い…

幸村を討て

著者:今村翔吾出版社:中央公論新社 今村作品の長編は最後まで飽きさせない。本作然り。 早い段階で幸村が退場してしまい、こんな分厚い本なのに大丈夫か? と心配したものの、すっかり今村さんにやられました。 「幸村を討て」をキーワードに 真田幸村、信…

戦争は女の顔をしていない

著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ翻訳:三浦みどり出版社:岩波書店 「同志少女よ、敵を撃て」の参考文献だったので読んだ。 oldstylenewtype.hatenablog.com 対ドイツ戦に参加した女性たちの証言を集めた記録で、 多くの人たちの生の声が突き刺さ…