吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

読書記録

祈りの海

著者:グレッグ・イーガン翻訳:山岸真 出版社:早川書房 奇想コレクションの「TAP」を読んで以来のイーガン。 長い間積んでいる間にすっかり色褪せてしまった。 時間をかけて読んでいたため記憶が既にあいまいだが、 ぼうっと読んでいると理解できなくなる…

ウナギが故郷に帰るとき

著者:パトリック・スヴェンソン翻訳:大沢章子出版社:新潮社 近頃ウナギを食していないなあ。 近所のウナギ専門の小さい店が無くなってからだから1年以上経つか。 気になっていた本作をようやく読む機会を得た。 アリストテレスやフロイトもウナギの研究を…

キーエンス解剖-最強企業のメカニズム

著者:西岡杏出版社:日経BP あまり身近に感じた会社ではないため、どんな会社か興味があったので読んだが、 営業をはじめとする仕事への取り組み方、顧客との接し方など、 いつの間にか忘れていた当たり前のことを当たり前に実行することの 大切さを思い出…

太陽が死んだ日

著者:閻連科出版社:河出書房新社 中国のある村で「夢遊」という病が伝染、拡大していく。 抑圧されていた欲望を隠すことなく行使していく人々の姿、 事態の顛末を少年の眼を通して描く。 最初から不穏な空気が流れる。 憂鬱な内容でありながら著者自身を登…

武器としてのエネルギー地政学-2030年、石油・ガス・脱炭素覇権の真実

著者:岩瀬昇出版社:ビジネス社 ロシア、ウクライナの戦争によってエネルギー資源が 政治的に利用される戦略物資であることがより明確になっているが、 本書では主要国の現状や思惑の概観を元三井物産の著者が解説している。 「シェール革命」、中国と日本…

火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

著者:ジャック・ロンドン翻訳:柴田元幸出版社:白水社 積んでいるロンドンを差し置いて、またまた寄り道。 しかし、こんな成果のある寄り道なら何度でもしたいもの。 もっと早く本書を読んでいればよかったと後悔しています。 極めて厳しい自然の中をサバ…

赤死病

著者:ジャック・ロンドン翻訳:辻井栄滋出版社:白水社 図書館で本書の存在に気付きました。 積んでいる「ジョン・バーリーコーン」「マーティン・イーデン」 があるのですが 薄くてすぐ読めそうだから先に読むことに。 出版のタイミングが2020年。コロナ禍…

情報セキュリティの敗北史-脆弱性はどこから来たのか

著者:アンドリュー・スチュワート翻訳:小林啓倫出版社:白揚社 数多くの参考資料を丹念に辿り、黎明期から今に至る歴史と問題点を簡潔に 提示している。 コンピュータやネットワークの進化は当然セキュリティリスクの増加を 招くこととなる。 経済性や国家…

君のクイズ

著者:小川哲出版社:朝日新聞出版 クイズ番組の決勝で対戦相手が問題を読む寸前にボタンを押し、正解する。 負けたプレイヤーはヤラセを疑いながらも、正解を導き出す可能性があるのか?を 考察しながら真実を探る過程が描かれる。 昔から早押しクイズは観…

まず牛を球とします。

著者:柞刈湯葉(いすかり ゆば)出版社:河出書房新社 本書の中では「改暦」のみ既読。 表題作はてっきりコミカルなSFかと思っていたが普通に面白いし リアリティもあってなかなか良い。 単純化してモデリングするのはよくある手法だと思うが、それでもユニ…

俺が公園でペリカンにした話

著者:平山夢明出版社:光文社 コロナの影響か、「八月のクズ」を読んだ時はもう読まなくてもいいかなあという 気持ちが若干あった。 それなのに「ペリカン」に何を話したのだろう?と気になって読んでしまった。 短編集なので、しんどくなったら表題作を読…

天路の旅人

著者:沢木耕太郎出版社:新潮社 第二次大戦末期に密偵として蒙古人の修行僧に扮して 中国奥地、インド、ネパールなどを徒歩で渡り歩いた 西川一三の苦難の旅と人生を描くノンフィクション。 本書を読むまで全く知らない人物だったが何と魅力的な人だろう。 …

江戸一新

著者:門井慶喜出版社:中央公論新社 「家康、江戸を建てる」と同系列の話かと思ったがもう少し柔らかい内容だった。 「明暦の大火」後の江戸を復興するため、知恵伊豆こと老中・松平伊豆守信綱の 奔走が描かれる。 戦争ではなく、災害に強い都市「大江戸」…

ハヤブサ消防団

著者:池井戸潤出版社:集英社 ミステリ作家の三馬太郎は、父亡き後の実家に移住し消防団に勧誘される。 ハヤブサ地区での新しい生活の様子や人間関係がかなり長めに描かれているので ちょっと退屈だったが、連続する火事を調べると 次々と謎の事態に巻き込…

一睡の夢-家康と淀殿

著者:伊東潤出版社:幻冬舎 関が原を描いた「天下大乱」に続き、その後の大阪の陣までの 家康と淀殿(茶々)の戦いが描かれる。 立場は違えど静謐を求め、子供を案じる親の心情は共通するもの。 秀忠に盤石な体制を引き継がせようとする家康と、 豊臣家のプ…

朝日新聞政治部

著者:鮫島浩出版社:講談社 元朝日新聞の記者が実名を出しながら朝日新聞の実態を描いている。 「慰安婦報道」における虚偽、誤報とされた福島原発事故「吉田調書」、 「池上コラム掲載拒否」など、数々の失態は朝日の凋落を加速した。 社内政治に明け暮れ…

カリストの脅威

著者:アイザック・アシモフ翻訳:冬川亘出版社 ‏ : 早川書房 何年も積みっぱなしだったので棚卸です。 アシモフ最初期の短編集。 各作品の前後に作品にまつわるエピソードなど本人による解説があり、 作品自体よりも興味深く読んだ。 デビュー間際の作品群…

第二開国

著者:藤井太洋出版社:KADOKAWA 奄美大島を舞台に過疎化が進む街に、巨大クルーズ船の寄港地として 誘致する計画が進み始める。 賛成派と反対派の対立やこの計画に不信感をもって動く公安などが絡み話は展開する。 著者が奄美出身だとは知らなかったが、奄…

家康が最も恐れた男たち

著者:吉川永青出版社:集英社 今年は立て続けの家康関連本です。 家康が遺訓の本意を正しく理解させるため、過去に戦った武将たちに それぞれ何を学んだかを林羅山に伝えるという連作集。 恐れた男たちは武田信玄、織田信長、真田昌幸、豊臣秀吉、 前田利家…

天下大乱

著者:伊東潤出版社:朝日新聞出版 秀吉の死後から関ヶ原の決着までを徳川家康と毛利輝元の視点から描かれる。 毛利や大阪方を操る石田三成が直接的には出てこないのは新鮮。 また、戦闘の場面はあっさりと描き、主に心理的な駆け引きや会話メインの展開は …

2022年の10冊

歴史的に見ても色々あった2022年もいよいよ終わります。新たに感想はアップしませんが、少しづつ再読していた亡き津原泰水さんの短編集「綺譚集」をギリギリ本日読み終わりました。やはり傑作です。 再読とか上下巻などありますが、目標としていた60冊によう…

イクサガミ 天

著者:今村翔吾出版社:講談社 三部作とわかっていながら我慢できずに読んでしまった。 明治時代に繰り広げられるデスゲームはあっという間に読めてしまうので やはり全部出版されてから読めばよかった。 個性的な登場人物が次々登場、退場を繰り返しし目ま…

語学の天才まで1億光年

著者:高野秀行出版社:集英社インターナショナル 高野さんの、一見緩さしか感じさせない(笑)過酷な冒険の数々に必要な言語を どのように取得してきたかが語られる。 実物のノートの写真を見ると案外几帳面で意外にも(失礼!)綺麗な字を 書かれるなとか…

2030半導体の地政学-戦略物資を支配するのは誰か

著者:太田泰彦出版社:日経BP日本経済新聞出版本部 出版が1年前のため、最近の状況をある程度知っていると古い情報もあるが 半導体を巡る世界の動向、流れを概ね掴むには良いかと。 かつて半導体王国だった日本のこの分野での凋落は、 そのまま国力の低下に…

機能獲得の進化史

著者:土屋健監修:群馬県立自然史博物館出版社:みすず書房 生物の獲得した機能と進化を「攻撃と防御」 「遠隔検知」 「あし」 「飛行」 「愛情」 の5章に分けて解説している。 イラストも豊富で読み易い。 軟組織である眼や生殖器などは化石としてほとんど…

幻想と怪奇 傑作選

監修:紀田順一郎/荒俣宏出版社:新紀元社 雑誌「幻想と怪奇」は古書店で見かけることはあったが読んだことは無い。 1974年に休刊し、2019年に復刻したようだ。 73年~74年の12号からの傑作選で、短編やエッセイ等バラエティに富んでいる。 ラヴクラフトと…

爆発物処理班の遭遇したスピン

著者:佐藤究出版社:講談社 長編だと思って読み始めたが、短編集だった。 ■「爆発物処理班の遭遇したスピン」 量子力学とテロを結び付けた表題作は緊迫する状況の中、 現実にありそうな米軍と日本の関係性と結末はリアルさを伴い、唸らされる。 ■「ジェリー…

地図と拳

著者:小川哲出版社:集英社 日清、日露戦争から第二次大戦の終焉まで、満洲国の架空都市を舞台とした 国家の建設と戦争をめぐる群像劇。 日本、中国、ロシアの思惑と登場人物の理想と野望が複雑に絡まり合いながら 歴史を紡いでいく。 戦争構造学研究所を主…

ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー

著者:石川宗生/宮内悠介/斜線堂有紀/小川一水/伴名練出版社:講談社 メンツが面白そうなので読む。 表紙がモロにラノベなのだが、今年読んできた日本SFの表紙がどうもラノベ風が多く、 買うのに抵抗が無くなってきている(笑) ところで講談社タイガな…

蹴れ、彦五郎

著者:今村翔吾出版社:祥伝社 戦国時代のスター的な武将たちではなく、名前は知っていても あまりスポットが当たってこなかった人たちににフォーカスしている短編集。 どの話しも著者の描く人物は爽やかで慈悲深くそして自らの信念に従う様が心地よい。 今…